序章 ~侵食の前の嵐(4)~
「死ね!!」
「マジ最低!!人間失格!!」
「何が、有名女子大出の令嬢だよ!!」
これが、妹の咲希のスマホに残っていたLINEへの書き込みの内容の一部であった。
そればかりか、専門学校に行けば、自分への悪評をわざと聞こえるように流され、酷い時には校内に彼女を誹謗中傷する内容のビラが張り巡らされてさえいたのだった。勿論、事実無根の話なのに。
「そうか・・・。これじゃ、表にも出れなくなるわな。」
智博は、幼い頃から咲希を知っていただけに、心が痛んだ。
「そうっすよ!!ただ1文字違いなだけで、そこまで言いますか?普通!!」
何でも、この一件で、学校は休学状態になり、食事の時さえ、家族とは別室になったと言うのだから、事態は深刻だ。
「最近は、あいさつどころか、目も合わせてくれないし・・・。」
しかも、友達からの励ましのメールさえも、返信しないばかりか、文面その物も信じようともしないのだと言う。
「売り上げが下がったのも、マジ迷惑ですけど、何の関係もない妹の心まで傷つくなんて・・・、許せないんすよ!!」
「そうだな・・・。」
話を聞くうちに、翔太とその家族への哀れみが浮かぶと同時に、智博の美咲への対抗心は、徐々に燃え上がって行くのだった。