第5章 侵食の終焉~2つの秋川家に訪れた明暗(4)~
結局、その日は結論が出ないまま終わってしまった、智博と咲希の再会だったが、咲希の愛する気持ちは、予想以上に一途な物だったようだ。
それから、咲希は智博にお手製のクッキーを渡したり、たまたま4月にあった智博の誕生日には、忙しい合間を縫って、丹精込めて作ったケーキをプレゼントする等、めげることなくアタックを続けていた。そして、時には・・・、
「先輩!!いい加減、咲希の気持ちを分かってやって下さいよ!!俺から見ても、かなりマジみたいですから!!」
とやや姑息ながらも、兄の翔太を介する形で、熱い思いを伝えることもあったのだ。
こうして、最初の告白からおよそ半月後、咲希の気持ちに嘘偽りが無いことを知った智博は・・・、
「咲希、お前の熱意には負けたよ。付き合おう!!」
「マジで?ありがとう!!」
自分が折れる形で、漸く首を縦に振ったのであった。
こうして2人の交際は幕を開けたのだが、やはり、お互い忙しいこともあって、一緒になれる時は限られていた。が、そもそも近所に住んでいる者同士だったせいもあってか、会う時は長く、そして色々な意味で濃密な愛を、徐々に育みつつあるのだった・・・。