第4章 侵食の進行~次々と吹いて来る追い風(5)~
その数日後、智博はお茶の配達をする為に、岳南製菓専門学校を訪れた。その最中、また咲希の親友の1人が声を掛けて来たのだった。
「こんにちは~、伊藤さん。」
「あっ、勝亦さんか。元気?」
「はい、おかげさまで。」
どうやら、あの電話の後、咲希は正式に復学したらしく、それからは何の問題もなく、授業や実習にも出席しているのだと言う。
「どう?咲希ちゃんは元気にしてるかい?」
「はい!!だから、私たちも楽しくて楽しくて、仕方がないくらいなんです!!」
すると、もう1人の親友が加わって来た。
「あっ、伊藤さんだ!!こんにちは!!」
「おう、今度は井出さんか。こんにちは。」
「伊藤さん、私には『こんにちは』って言ってくれないの?」
「あっ、ごめんごめん。(勝亦さん)こんにちは。」
商用のつもりが、ちょっとした再会の時間と化したのだが、3人はすこぶる上機嫌だった。
「あのね、伊藤さん。こないだ、咲希が復学する日に、クラスのみんなでサプライズのお祝いをしたんですよ!!そしたら咲希、『ありがとう・・・』って号泣してたんですよ!!」
「それからは、咲希もすっかり元気になっちゃって、実習の時間なんか、張り切って課題のお菓子を作るくらいにまで回復したんです!!」
「そうなんだ。君たちは、本当に友達思いなんだね・・・。」
この日は生憎、咲希に会うことは出来なかったが、親友を通じて、予てからの目標であった復学が完全に叶い、幸いにも、休学期間の大半が夏休みとかぶっていたこともあって、卒業にも影響が及ばない範囲だったことも知り、改めて咲希が心身共に回復したことを、智博は心から喜ぶのであった。