第4章 侵食の進行~次々と吹いて来る追い風(3)~
翌日、智博のスマホに着信履歴があった。留守番電話に1件メッセージが入っていたのだが、それは翔太からの物だった。
「先輩、昨日はどうもすいませんでした。ただ『秋川』って名字だけで、あっちの方にくっつくだなんて勝手に思ってしまい、反省してます。僕は先輩を信じていますので、また会って話をしましょう。」
可愛い先輩からの謝罪に安堵した智博だったが、実は、あの商工会議所での会合の後、こんな会話があったのだと言う。
「伊藤。一体何で、あんなこと言ったんだ?」
「いや、本当は僕も処罰の方なんですけど、どうやら農協のトップの人が秋川家の擁護する側に付いていて、あの人がどかない限りは、どうすることも出来ないらしくて・・・。」
「で?」
「でも、噂ではその次のえらいさんが、秋川家解任派の意向を示しているらしく、役員の人たちも多くが解任の声を挙げていて、僕としてはトップが交代した時を狙って、解任姿勢を前面に押し出そうと・・・。」
これは、智博が所属する部署である地域活性化部門の先輩との会話の一部であるのだが、やはり誤解のないよう、普段親身になって接してくれる先輩を選んだ上で本音を打ち明けたと言うことなのだ。
「そうか、分かった。じゃあ、お前も処罰の方で間違いないな?」
「はい!!心配と迷惑をお掛けして、申し訳ありません!!」
その後、先輩の口利きもあり、智博は組織内での孤立を免れたのだが、一歩間違えれば、反旗を翻したとも思われかねないケースに陥っただけに、ちと言い方が悪かったと反省するのも忘れていなかった。




