第3章 侵食の始まり~名家の外堀を埋める時(7)~
しかし、しばらくすると、智博がこう切り出して来た。
「君たちは、咲希ちゃんとどのくらい仲がいいの?」
「て言うか、あんた誰?」
「僕は、咲希ちゃんのお兄さんの友達で、伊藤と言う者です。」
自己紹介も兼ねたいきなりの発言に戸惑いながらも、そのうちの1人がこう答えてくれた。
「私は、高校時代からの親友なんですけど、どうしても咲希のことが心配でたまらなくて・・・。」
すると、もう1人も口を開いた。
「私も、咲希とは高校の時から仲が良かったんですけど、当然、咲希がそんなことをするわけがないし、ただ名前が似てるだけで、親戚とか同一人物と間違われるなんて、あり得ないと思って・・・。」
そして、もう1人も、
「私は、専門学校に入ってから仲良しになったんだけど、あまりにも噂が広まり過ぎちゃって、咲希の味方をしようにも、怖くて出来なかったんです・・・。」
「そうなんだ・・・。」
友人たちの本音を聞いて、智博は黙り込みながらも、あたかも、咲希が濡れ衣を着せられたかのような理不尽な出来事に、皆、沈痛な思いを抱いてることを知った。そして、自分以外にも、咲希の名誉を如何にして回復し、心身共に立ち直って欲しい者がいることを感じ取ったのだった。