第2章 侵食の源流~智博の心に芽生えた野望(2)~
こうした並々ならぬお茶への情熱の持ち主である智博が、もう1つ真剣に打ち込んでいた物。それは、サッカーであった。
予てから、サッカー熱の高い県に生まれたせいもあるが、家業の手伝いの傍ら、小学生から始めて以来、主にフォワードのポジションで、持続力の高いドリブルと足の速さから、常に主力選手の1人に数えられていた。そして、司令塔の役割を担うほどに戦略性の高さも持ち合わせていて、中学時にはキャプテンを任されることもあった。
そして、何よりもチームワークの重要性を強調しており、小学生・中学生の時にそれぞれ1度ずつ、地区大会で優勝を果たしたこともあり、県内の強豪校からスカウトが来たこともあったほどだ。
結局、家業に専念にしたいとの思いから、高校以降サッカーからは離れていたが、時には近くの少年サッカーチームのコーチを務めたり、地元Jリーグチームのスポンサーに名を連ねるほどのサッカー好きでもあるのだ。
と同時に、地元の狭い範囲とは言え、かつててっぺんを極めた経験からか、お茶の世界でも頂点に立ちたいと思う気持ちも日に日に強くなり、実家からさほど離れておらず、同じクラスにこそなったことは無いものの、常に地域の頂点に君臨していた美咲の実家・秋川家に只ならぬライバル意識を持つようになったのである。