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コイン・メイカー  作者: 安田勇
29/55

七章 一億・総自己中化時代  ①


 七章 一億・総自己中化時代


   一


「とにかく『ゴミ三年』と『赤点巨乳女』の二人は、

絶対にあやしいと思います!」


 西浦は一語一語に怒りをこめて説明した!


 あの二人の顔を思い出すだけで体の内部から爆発

的な不快感がこみあげてしまう!


 大岩は何も表情を変えず、うなずきながら静かに

聞き返した。


「では、君の言う『ゴミ三年』と『赤点巨乳女』

は誰と交流しているんだ?」


「大倉志歩とかいうボケた女と大倉葵とかいう男

みたいな女と、水谷夏夜とかいう暗い女の三人

です! かわいい女の子は一人もいませんけどね!」


「本当にその三人なのかい?」


「本当です! 『ゴミ三年』は映画観賞部の部室

で合計四人の少女と、毎日学園ハーレムを楽しん

でいるんです! 


 ライトノベルの主人公じゃあるまいし、あんな

無価値男が四人の少女とハーレムを楽しむなんて

世の中狂ってますよ!

 たとえ、それがかわいい女の子ではなくても

絶対に許せません!


 世の中には僕のようにメチャクチャ努力して

美少女と出会おうとする人間もいるのに、あんな

楽してうまくやっている奴を見るとメチャクチャ

殺意を感じますねっ!」


 西浦は怒鳴った! 早口で! 大声で! 

怒りと憎しみをこめて! 


 もし誰かが『ゴミ三年』の悪口を聞いてくれる

としたら、三時間以上ノンストップでしゃべりつ

づける自信がある!


 かつて『ゴミ三年』の悪行を許していた時期は

あった!

 しかし、『ゴミ三年』が自分よりも『幸せでは

ない』条件が満たされての話だ! 


 自分よりも『大きな幸せをつかんでいる』現在

の『ゴミ三年』を、許す理由など存在するわけが

なかった!


「……広瀬なるみがコイン・メイカーである可能性

は高いな。断定するにはより詳しい調査が必要だが」


 大岩は共感するわけでも批判するわけでもなく、

腕組みをして重くつぶやいた。


 今日は西浦がスパイ活動を始めた翌日の夜だった。

場所はいつもの訓練場。


 人の話し声が聞こえたため西浦が大岩から視線

を外すと、広場の隅に自分達以外のリフォーマー

のメンバーが四人いた。


 警官の帽子と制服を身につけた二十五歳以上の

男達だ。聞くところによればコスプレ・ポリスと

いう集団らしい。


 四人の偽物警官達は腕や足にギプスをつけたり、

頭や顔に包帯を巻いたりしていた。

 全員が重い傷を負っている様子だった。


 五日前――最強クラスだと言われる良貨連盟

のユーザーと戦って派手に痛めつけられたという。


 コスプレ・ポリスの連中は無気力な顔で地面に

座りこみ、暗い声で話しながらMコインの交換会

をしていた。


 西浦は鼻を鳴らすと視線を大岩に戻した。

 カスな大人達を見ても楽しくも何ともない。


 腕組みをして考え事をつづけている大岩に自分

の願望を語った。


「『ゴミ三年』が良貨連盟の関係者だと分かっ

たら、始末してもいいんですよね?」


「情報収集が終わったらね。その時は僕も立ち

会うよ。

 命を奪うのか、拷問を加えて再起不能の傷を

負わせるのかは西浦君に任せるが、極秘に行う

必要があるな。

 まあ、今月中には始末できるだろう。もう

少しのガマンだ」


 いつもと同じように大岩は、危険な発言を

さらりとした口調で言ってのけた。


 今まで大岩の危険な発言を聞く度にヒヤヒヤ

した。しかし、アビリティーを身につけた今の

西浦には自然と理解できた。


 世の中の平和を乱す邪悪な者を始末するの

は、自分達リフォーマーの大事なお仕事なの

だ。


「今日は実戦訓練に行く前に新しいアビリ

ティーを教えよう。


 西浦君のような間接戦闘の専門家には、

攻撃後に敵から遠ざかる高速移動の術や、

敵の攻撃から身を守るための鉄壁防御の

術も必要だ。

 この二つを身につければ、君は確実に

達人級のユーザーになれるだろう」


「大岩さん、その前に約束していた大事な物を

忘れてないですかあ? ずっと前から楽しみに

してたんですけどお……」


 西浦は戦闘訓練に入ろうとする大岩に対し

て、意味ありげに笑いかけた。


「ああ、そうか。そうだったな」


 大岩はとぼけたように笑うとポケットから

コインケースを出してきた。

 約束していた大事な物――優越感のMコイン

だった。


 西浦が急いでケースを開くと、中に五十枚

以上Mコインがあるのが分かった。


 手の平にMコインを乗せて一枚ずつチェック

を開始する。

 今すぐレベル二以上の優越感を使用して幸せ

になりたかった。


 しかし、根気良く探したが、お目当ての優越

感は数が少ない。


 優越感のかわりに不気味な属性のMコイン

ばかりが目立つ。

 期待が外れた西浦は大岩にグチをこぼした。


「大岩さん、これって優越感が少ないですよ。

どうしてですか?」


「優越感のかわりに、ねたみの属性を入れて

おいたんだ」


「ねたみって何ですか?」

「自分より幸せな人間を憎たらしく思う気持

ちの事だよ。君にぴったりだと思ってね」


 大岩は西浦の質問に対して、お得意の冷た

い笑顔を浮かべた。


 今回の笑顔の冷たさはドライアイスのレベル

をこえていた。

 南極に吹く猛吹雪のような激しい冷気を感じ

させる笑顔だった。





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