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いざ街へ

翌日、若干不機嫌なサリナは昨日のことを踏まえ、目をつむったまま着替えを済ませた。そして、身支度をはじめるために鏡を覗き込む。そこで始めて円はサリナの顔を今まで見ていないことに気づいた。

 真っ赤に染まった長い髪を一本にまとめようとしている少女の顔は、キリッとした赤い目と眉。鼻筋は整っており、今は唇を曲げているが、そこには気の強そうな美人がいた。目線を少し下に向けると、そこには昨日下着の上から見たとおり、控えめすぎる丘だったことは少し残念である。


(うひゃー……すげー美人。ファンタジーさまさまだな)


 サリナには聞こえないようにおもいを巡らせる。

 身支度を終え、部屋を出ようとしているサリナに声をかける。


(ごめんって、いい加減機嫌直してくれよー)


(はぁ。昨日は私の不注意もあったから許すけど、今度からそういうのは前もって言いなさいよ)


(そういうのって、トイレとか……いえ、なんでもないです)


 ふざけたことを言おうとした円を雰囲気だけで黙らす。


(んで、今日は何すんの?あれか!早速、魔導的な授業か!)


(期待してるとこ悪いけど、残念。今は学年末、つまり進学課題の提出期限間近だから授業はないの。

 それが終わっても春季休業で後二ヶ月は授業はなくて、自己学習と研究室通いくらいね)


(ええー。それじゃ、しばらくは異世界っぽいのはないってことかよ)


(んー、一応あなたの体作りの研究はすぐ始めるつもりだけど、そんな派手なものではないわね)

 

(じゃあ、今日の予定は?)


(とりあえず、街でも散策しましょうか。あなたって、ここのことをほとんど知らないでしょ)


(お、いいね!いざ、魔導の街へ!)


(その前に朝食ね)

 

 昨日と同じように元の世界と変わりない食事を終え、食堂を出ると声をかけてくる人物がいた。


「サリナおっすー」


「おはよう、リノ」


 サリナと同じ格好をした、金髪ボブの爽やかお姉さんが話しかけてきた。

胸には制服の上からでも分かる大きな丘、すらっとした手足をしていて、いわゆるイケメン顔をしている美人だった。


(この人は?)


(同級生よ)


 円との会話は手短に済ませる。


「それで、どうだった?」


「半分失敗、半分成功ってとこかな」


「ん?どゆことよ」


「身体全部は無理だった。それで意識だけが私に憑依しちゃったのよ。まぁ、研究室は希望通りだから、いいといえばいいけど」


「おめでとう。希望通りってことは、アルカマン教授のとこでしょ!大成功じゃない。

 それで、その召喚者くんは今いるのかな?」


「ありがと。念話なら通じると思うわ」


(聞こえるかな?私はリノ=アイオライト。サリナと同じで四年の召喚術専攻だよ)


(ども、小野円です)


(ふふ、サリナのことよろしく。それじゃ、私はちょっと用事があるから、これで)


 それだけ、言い残しリノは学園の中心に向かって去っていった。


(なんか、かっけえ感じの人だったな)


(でしょ。彼女見た目もそうだけど、素質や性格も相まって学園でも結構な有名人なのよ。

 専攻は同じだけど、方向性が少し違うから、同じ研究室にはならなかったけどね)


(ほーん)


 その後、自室で支度を整え、サリナは街へと歩を進めた。




(すげぇ!これぞまさにファンタジー!)


大層な扉をくぐった先にはファンタジーが広がっていた。

街には赤煉瓦の建物が立ち並び、何本か見える大きな通り沿いには屋台が並んでいるように見える。

人々も個性的で、獣人やエルフといった王道ともいえる人種も見える。

遠くにはこの街を囲う壁が張り巡らされていた。

また、学園振り返ってみると、学園と街との間には堀があったり、学園が小高い所にあることで、円の世界の城的な役割も果たしていることを表していた。


(すごいでしょ。ここが十校ある学園都市の中心の第一学園都市よ。

他の学園都市でもそうだけど、ここで暮らすには魔導を一定以上使いこなしていることが必要で住民のほとんどが第一魔導学園の卒業生なの)


(ほぉー、んじゃここの人らいわゆるエリートなのか。

エリートだらけの街って聞くとなんか抵抗というかむずがゆい感じがするな……)


(エリートね……

まあ、たしかに第一魔導学園出身を無駄に誇りに思っている人も少なくないんだけど、そういった人は相手にしないのが一番よ)


(でもさ、ここが一番できる奴が集まる場所なんだろ?

それを誇りに思うことって、そんな変なことか?)


(私に言わせれば、出身校に誇りなんて持っているのは三流以下の魔導士よ。

本当の魔導士は自らの魔導に対してのみ誇りを持つものなのよ)


(そんなもんか)


(そんなものなのよ)


そんな会話をしつつ、足の向いた先は商店の立ち並ぶ大きな通りだった。


(ここが魔導都市のメインストリートね。

必要なものは大体ここで揃うのよ)


四車線道路くらいの広さの道は魔導学園から真っ直ぐ進んだ通りで、ある程度魔導学園から離れたところから、左右に露店や見慣れない外装の商店が立ち並び始めた。

露店は見慣れたものから、見たことない果物らしきものなど食料品を中心に売られており、商店では宝飾品や本などが売られているようだった。


(なあ、なんか店の種類が少なくないか?

ここがメインストリートなんだろ?)


(……まあそう言われると思ったわ。

さっきも言ったけど、この都市に住んでいる人って全員が魔導を使えるのよ。

つまり、魔導で簡単に生み出せるものっていうのは、ほとんど売れないわけ。

それで、それ以外の売り物になるものっていうのが、食べ物、宝飾品、本くらいのものってこと。

もちろん、その他のものもあるにはあるけど、それは芸術的な価値のあるものとか、最高級のものとかになってくるのよ)


(んだよ、ガッカリだよファンタジー!)


(まあ、輸出専用の市場があるから、そっちには本当になんでもあるし、マドカの満足いくものもあるんじゃないかな)


(だった最初からそっち行ってくれよ)


(まあ、ここがメインストリートなのは変わらないからね。

この都市に来た人のお約束みたいなものよ)


そうしてサリナが歩を進めようとしたところ、露店の一つから男の荒げた声が聞こえてきた。

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