香りの無い花
掲載日:2014/06/28
エル氏の職業は植物学者である。特に品種改良を得意としていた。
ある日のことだ。エル氏は自宅のポストに匿名の手紙が投函されていることに気づく。
「香りの無い花を作ってくれ。金は後で払う。」
エル氏は無神論者であるが、何故か神の試練だと考え、作ろうと思った。
香りの無い花を作るのに其処まで時間は掛からなかった。一つの問題を除いて。
そもそも花の香りは、花粉を運ぶ虫を惹きつける為のものである。香りを無くすと、植物の生存本能で大量の花粉が出てしまう。これはどうしようもない事だった。
不肖な思いでエル氏は指定された住所に郵送した。栽培用の種も一緒に。すると次の日度肝を抜く程の大金が振り込まれていた。気に入られたのだ、あんな失敗作が何故か。
* * *
郵送されてきた種を見て男はほくそ笑んだ。
「これで花粉症薬がまた売れる。」




