7/13
挑発
波倉未来は末村弾希と共に病院からの帰路についていた。会話はない。
波倉は古式が見舞いに来たショックと、二人切りにしてきた不安で考え込んでいたし、末村は元来大切な事は語らず行動する人間である。
「波倉」
だからこそ別れ際、末村の真剣味を帯びた声を聞いた時、波倉はそれこそ告白でもされるのかと一瞬戸惑った。
「古式に会ったか?」
「……うん」
しかしそれはただの確認。いつもの覇気がない波倉の反応に、末村は拳を握る。
「俺が言うべきじゃないのだろうが、時が来たんだろう」
「……でも今更、言えないもん」
「じゃあ、ずっと言わないつもりか?」
「それは……」
波倉は言葉に詰まった。
「言わないならそこまでの気持ちだったって事だろ、諦めろ」
末村はわざと波倉を怒らせるような台詞を残して、背を向けた。
「不器用よね、アンタ」
お互い様だ、と末村は片手を上げて応えた。そして、その手を握る。
友に応える事が出来る手の平は、時に友と語らう拳となって奮われる。
高月に対してどちらになるかは、今の末村には分からなかった。