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配慮

 古式が高月の病室を訪ねる少し前、末村弾希は病院の待合室にいた。いかにも健康体という彼がここにいるのは無論、自らの養生のためではない。

 波倉未来とともに病院まで来たのだが、適当な理由をつけて彼は波倉を一人で病室に行かせたのだ。

 もっとも、さすがに適当とはいえ病院で急激な腹痛のふりをした彼は、危うく急患として医者に突き合わされそうになったのであるが。

 相変わらず不器用ね、と今いない誰かに末村は笑われた気がした。

 不器用はどっちだ、と末村は暇つぶし程度に胸中で言い返す。

 小学校から仲がよく、中学校で想いに気づき、それでも高校まで仲良しこよしやってきた波倉にだけは言われたくない。

 ましてや高校に入って昔馴染みに高月が再会、そしてどこかよそよそしくなり、波倉共々心配していたら挙げ句、相手との仲介を頼まれるとか……。

 どこまで不器用なんだ。一周回って器用なんじゃないか、と末村は頭を抱えたくなった。

 大体告白なんて、とそこまで考えて末村は沈思を中断する。

 他人の告白の成功例ほど語るにうっとうしいものはないが、自分の告白の失敗例ほど語るに恥ずかしいものなどない。

 末村は無言のまま立ち上がる。

 そろそろ自分も高月の病室に行こう。どうせいい雰囲気になどなってはいまい。

 末村がそう思い歩き出してすぐ、

「末村君」

 聞き覚えのある声で、小さく透き通った高い声で、末村は呼び止められた。

「古式か」

 末村は応えてから、振り返る。

 無垢で無邪気で残酷な、人の気も知らない天然少女が小首をかしげていた。

「高月君の病室はどこ?」

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