3人だったはずだよ。何であしあとが……
掲載日:2026/08/11
新雪の足跡が語る、静かな違和感と底なしの絶望。
極限状態の雪山で出会うのは、希望か、それとも——。短いページの中に込めた一瞬の氷結を、どうぞお楽しみください。
「これで最後だよね」
新雪を踏みしめながら、私と健太、そして美咲の3人は無人の雪山を進んでいた。遭難の恐怖と隣り合わせの中、ようやく人里へと続く一本道を見つけたときだ。ふと振り返った健太が、凍りついた声で呟いた。
「……なぁ、俺たち3人だったはずだよな? なんで足跡が足りないの?」
指差された雪原を見る。そこには、2人分しか足跡が残っていなかった。
「冗談はやめてよ」と笑い飛ばそうとした美咲の足元を盗み見る。彼女の足元には、真っ白な雪がそのまま広がっていた。彼女は雪を踏みしめてなどいなかった。浮いていたのだ。
その瞬間、美咲が首だけを真後ろにギギギと曲げ、見たこともない笑みを浮かべた。
「あはは、気づいちゃった?」
不気味な声が響く中、彼女の背後から影が伸び、静かに私たちを包み込んでいった。最初から、美咲なんてここにはいなかったのだ。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
逃げ場のない雪山で「最初から3人目なんていなかった」と気づく瞬間の絶望感を描きました。
あなたが雪道を歩くときも、どうか後ろの足跡を確かめてみてください。




