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【短編集】5分後にほろり ファンタジーな恋話集めました  作者: 響ぴあの


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9/16

死んだ友達からの不思議な手紙

 白地にクローバーの模様の封筒が届いた。差出人の名前を見て私は思わず体をこわばらせた。


「なんで――???」


 疑問符が頭を覆う。


 差出人は遠野かなで。同姓同名? その名前の知人はたった一人のはずだ。彼が私に宛てて手紙を送るはずがない。正確に言うと手紙を送ることができないはずだ。誰かの悪質な嫌がらせかどっきりだろうか?


 そんな間柄の友達はいない。あの小学校にいた時期はほんの1年程度。引っ越ししてから交流がある同級生はいない。正確に言うと、交流があったのは、遠野かなでだけ。友達ができない私の唯一の友達は遠野かなでしかいなかった。彼は分け隔てなく誰にでも優しく接してくれる。そんな彼のことが密かに好きだった小学生時代。だから、転校しても、彼とはずっと文通を続けていた。転校してからも彼よりも心を許せる友達はいなかった。


 優しく美しい顔立ちで、甘い声が心をくすぐった。人気者の彼はなぜか私を特別扱いしてくれたように思う。個人的に放課後や休日も遊ぶことが多く、彼の一番近くにいたのは私だと心の中で自負していた。


 でも、ありえない。何故なら――遠野かなでは現在この世にいない。


 だから、手紙の主が彼であるはずはないのだ。


 少し古びた封筒は時代を感じる。紙の色も日焼けしている。そして、字はまるで子供のままだ。小学生が書いた字のようだ。まさか、タイムスリップレター?


 あるはずもないけれど、ドキドキしながら手紙を開ける。


 やっぱり、かなでだ!!


 彼と文通していた私が感じるのだから間違いはない。手紙を読んでいた時程、心穏やかに過ごせる時間はなかった。


 でも、ある日突如彼の両親から丁寧な文章の手紙が届いた。


 かなでは事故でこの世を去った。息子と仲良くしてくれていままでありがとう。

 平たく言えばこんな感じの文章だった。だから、交換手紙はこれでおしまいにしましょう。ショックが隠せない。私はもう誰かと心を通わせることはないかもしれない。この世に彼がいない世界、それは私にとって暗黒の世界だった。二度と会えないという悲しみ、辛さは何にも代えがたいことだった。


 それ以来、手紙を書くことはなくなった。それ以来、誰かと文通をしたことは一切ない。


 緊張マックス状態で手紙を開く。すると――


『まなみちゃんへ 今はどんな仕事をしているんだろう? 学生かな? お母さんになったかな? 久しぶりだね。実は、僕は小学6年生の遠野かなでだよ。びっくりしたでしょ? 今、僕はどんな仕事をしてどんな大人になっているだろう? ずっと言えなかったことを手紙に書くよ。僕は君が好きだと思っている。きっと大人になって好きの形は変わっても幸せを願っているよ。今更告白なんて遅いけれど、いつか伝えたいと思って手紙を書きました。 遠野かなで』


 小学生の男子にしては丁寧な字体だと思う。6年生の時ならば、まだ生きていたよね。でも、どうやってこの手紙が届いたのだろう? それに未来に向けた文章というような書き方だ。


 もう一枚紙が入っている。


『この手紙は10年後の大切な人に送るタイムカプセルプロジェクトです。郵便センターのほうで手紙を預かり、送付しております。差出人の住所が変わっている場合があります。住所が変わっている場合、住人が変わっている場合は郵便センターにお知らせください』


 そうか――。かなでは私のためにラブレターを書いてくれたのか。大切な人だと思ってくれたのか。目頭が熱くなる。涙が自然とあふれる。彼からの手紙を二度と受け取ることがないと思っていた。ステキなサプライズ――うれしい。


 もう一枚、手紙が入っている。赤い紙に黒い文字だ。

『この手紙が届くころ――大きな地震がある。早く高台に逃げて』


 その瞬間大きく地鳴りがする。こんな音は初めてだ。大きく視界が揺れる。


 地震――!!!


 この地域は海沿いだ。高台に逃げるのは津波が来るとき。

 でも、今まで我が家は津波の被害に遭ったことはない。

 でも、この地震の規模ははじめてだ。


 はやく、避難しないと。

 避難道具を持つ。

 家を出る。

 家族は無事だろうか。


 近所に住むおばあちゃんは避難できただろうか。家に戻ろうとすると――

 誰かが手を引っ張る。

 少年の手だ。


 もしかして、かなで――??


 少し離れた場所には、大人になったであろう姿の少年がいた。優しくて穏やかでにこやかで。柔らかな髪の毛が風になびく。


 手招きする。


「かなで?」


 本当は生きていたの? 思わず駆けよる。


 優しい美しい顔立ちは変わっていない。


 かなでは、なぜか逃げる。まるで鬼ごっこ。しばらく、走ることなんて滅多になかった。いつぶりだろうか。甘い笑顔で手招きする。でも、今彼を追いかけなければ、もう二度と会えないかもしれない。真剣な表情で山道をかき分け息切れしながらも山道を登る。

 私は必死にかなでを追いかける。


 高台まで来てしまった。


 そう思い、振り返ると津波が我が家を覆っていた。


 かなでの姿を探す。しかし、いくら探しても、彼の姿はなかった。


 手紙を読み返す。しかし、2枚しかない。落とした記憶はない。


 どんなに探しても、3枚目の『この手紙が届くころ――大きな地震がある。早く高台に逃げて』という内容の赤い紙は何度探しても見つからなかった。


 かなでが助けてくれたの? 


 ありがとう。大好きな初恋の人。そして、子供の頃の友達は今も大事な友達だよ。


 私は幻の手紙と大人になったであろう幻の青年、かなでに助けられたらしい。

 

 のちに彼の生死を確認したが、この世に存在することはなかった。しかし、郵便センターのタイムカプセルプロジェクトというものは実在しており、たしかに郵便を預かった証拠はあった。しかし、中身の枚数などを調べることは不可能で、あの赤い手紙が幻だったのかどうかまでは調べることはできなかった。


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