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塔の中の女神  作者: 米野雪子


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8/12

それぞれの胸中


お父様が退室して、私はすぐに塔に戻された。

舞踏会の招待客に私の姿を見られたくないのだろう。


ドレスは貰っていいと言われたが、

あの部屋に、こんな大きなドレスを仕舞えるクローゼットはない。

私はそれを理由に返却を希望したが、王太子は難色を示した。

側妃様が良かったら預かると申し出てくれ、それは解決した。


そして、いつもの部屋着に着替え塔に向かう。



「お帰りなさいませ」


「ご苦労様です。鍵を開けてくださる?」



塔のドアの前にいる、3番目の騎士に挨拶する。

私の後ろの人物を見て、一瞬目を見開いたが、すぐに腰を折り丁寧な礼をした。


今まで、一度もここに足を運ばなかった王太子が、

私のいる塔を念のために視察したいと、

送り届けるのを口実にしてついて来たのだ。

お父様とお姉様とのやり取りを見て、何か思うところがあったようだ。


側妃様も同行したがったが、王太子が止めていた。

この塔の劣悪の環境と、私への待遇を知られたくないのだろう。


何重にも巻かれた鎖と、4箇所にある鍵を開け、螺旋階段を上がる。

一番上の部屋のドアを開けて中に入る。



「どうぞ、ここです。ご覧になってください」


「ああ、では…失礼する」



私は暖炉の前にしゃがみ込み、慣れた手つきで火をつける。

小さな室内に、パチパチと焚火の音が沈黙を破るように響いていた。



「ここに…ずっと?」


「はい」


「…そう、か……恥ずかしながら、異国の地に慣れるまで、

 王宮以外の離れで、あなたを保護していると聞いていたのだ。

 まさか、こんな扱いを受けていたとは…知らなかった」


「権限は国王陛下がお持ちなので、国王様のご判断なのでしょう」


「…ああ、そうだ。父上にあえて詳細を確認しなかった私も同罪だ…

 すまなかった…」


「何に対してでしょうか?」


「この劣悪な環境についてだ。

 これでは、まるで囚人だ…君は平気なのか?」


「敗戦国の王族の扱いなど、こんなものです。

 私に、要求する権利などあるとお思いですか?」


「そうだな…軽率だった。だが改善はする」


「結構です。

 私が立場を弁えず、生意気にも何かを望んでしまった時、

 それがきっかけで、国王の逆鱗に触れるかもしれないのです。

 私の国、お父様、お姉様、民達に、報復されるかもしれない。

 危険が及ぶような真似はしたくないのです」


「…………そう、か…」


「今まで通り、どうぞお捨て置きください。

 私は不自由しておりません。

 …あと、申し訳ありません。

 私はもうお暇したいので、そろそろよろしでしょうか?」


「あ、ああ。分かった。……では、失礼する」



あの王太子は、恐らく本当に知らなかったのだろう。

随分、青い顔をしていた。


側妃様が実質正妃のようなものだし、

敵国の王女の名ばかりの正妃に、最初から興味もなかったし、

気にもしていなかったのだ。


そして、今日、

私を一人の人間として、やっと認識したのだろう。




*******




「凄く綺麗だよ、イメダリヤ」


「ふふっ、ありがとう。エリアス様。

 私は、あなたと運命的な出会いができて、

 愛を知って、子まで授かって、凄く幸せですわ」


「そうか、私もだよ」


「ふふふっ、こちらの国は裕福なのね。帰りたくないわ」


「そのうち、併合するから行き来は容易になる。もう少しの辛抱だ」


「ええ、そうね。楽しみだわ」


「それより、最近の動きはどうだい?あまり報告を聞いていないんだが…」


「え?ああ……大丈夫よ。変な動きはないから、安心して」


「そう?」


「以前渡した、保守派の貴族名簿は役に立ちまして?」


「あ?ああ。勿論。警戒対象者がわかって助かったよ。ありがとう」


「ふふっ、どういたしまして。それより、もう1曲踊りましょう?」


「体は大丈夫かい?大事な時期だろう?」


「まあ、優しいのね。ふふふっ、大丈夫よ!」



ああ、早く帰りたい。


せっかく帰国したのに、この女のせいで愛する家族の元に帰れない。

愛されていると疑うことなく、幸せそうに微笑んでいる。

十人並みの容姿のくせに、この自信はどこから来るのか。


この王女の妹が、こちらに輿入れという名の人質になっている。

今日、面会したはずだ。

だが、こいつは一言も妹の事を話さない。

心配どころか、無関心で存在していないように振る舞って、

ダンスを楽しんでいる。


自分さえ良ければ、他はどうでもいいってか。


敵国の騎士にのぼせ上がって、妊娠までする女だからな。

浅慮な馬鹿女だ。


諜報員として赴いた俺の美貌に、見惚れていたのはすぐ分かった。

面白いぐらい、あっという間に籠絡できた。

利用するだけして功績を上げ、せいぜい俺の出世の踏み台になって貰うさ。


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