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塔の中の女神  作者: 米野雪子


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敗戦国の国王と王女


「お父様、舞踏会のドレスこれでいいかしら?」


「…好きなのを着ればいい」


「あら、不機嫌ですのね…どうしましたの?」


「なぜ、そんなに浅慮なのだ?

 お前の妹が、ジュリエッタが人質になっている国の招待だぞ?」


「まあ、お父様ったら。

 大丈夫ですわ。あの子は強いですもの」


「こちらから出した手紙の返事もない。

 本人に渡されていないのかもしれん。

 隣国に問い合わせても、元気にしているの一点張りで、

 誤魔化されているとしか思えん」


「心配性ですわね。

 それに、どうせ舞踏会で対面できますわ」


「ともあれ、お前は浮かれすぎだ。少しは落ち着け。

 そんな風では、外交先で冷静に物事を判断できんぞ」


「申し訳ございません。

 ふふっ、でも無理ですわ。だって私幸せなんですもの」


「…っ…恥知らずが…」


「まあ、怖い!なぜ喜んでくださいませんの?

 世継ぎが生まれると言うのに」


「敵国の騎士の子なのにか⁉︎

 世継ぎになど、なれるわけなかろう!

 生まれても利用されるだけだ!」


「同盟国ではないですか!

 お父様こそ、敵意を剥き出ししすぎですわ。

 敗戦からもう1年経つというのに…

 約束通り、我が国を悪いようにはしておりませんわ。

 それに、お腹の子の父を悪く言うのはおやめ下さいませ!」


「隣国からの監視目的で在住された、外面だけの護衛騎士に簡単に籠絡されて、

 のぼせ上がりおって!あげく婚姻もしてない王女が懐妊など…

 恥以外なんだと言うのだ!

 我が国の農作物を半分以上搾取され、技術は横取りされ、

 民の生活はギリギリなのだぞ?」


「敗戦国では、多少の犠牲は仕方ないですわ。

 それは、贅沢と言うものです」


「来年からは、隣国の貴族がこぞってこちらの領土に押し寄せ移住してくる。

 しかも、目ぼしい領地と爵位の譲渡まで議会で強制的に可決され、

 ますます支配が強くなるというのに…お前は楽観的すぎる!」


「虐殺されないだけマシではありませんか!」


「ジュリエッタの犠牲の元だ!それを忘れるな、愚か者!」


「ああ、嫌だわ。

 お父様ったら、偉そうに振る舞うのと

 “威厳”を履き違えていらっしゃるのではなくて?」


「何だと?」


「偉そうにするのも結構ですけど、

 負け戦は誰のせいですの?

 ジュリエッタが隣国の生贄になり、民達が飢えてるのは、

 全て国王陛下、あなたのせいでは?

 そのせいで我が国は、ただの負け犬風情に落ちました。

 こうなってしまっては、威厳も何もありませんわね」


「そうだ、私のせいだ。勝機を見誤った。

 だから、少しでも不利にならない取引を最悪を避けるために足掻いている。

 では、お前は王女として国のために何をした?

 敵国の騎士に股を開いて平和になったか?」


「まあ、私たちの神聖な愛をそんな下品な言い方しないでくださいまし。

 たまたま出会う前は、敵国同士だっただけですわ。

 それが同盟国になって運命的に結ばれたんです。

 それに、敗戦国になって、私だって立場的に不安で怖かったですのよ?

 その中で見つけた私の幸せを…好きな方の子を宿したのが 

 愚かだと言うのですか?」


「あの騎士に丸め込まれたか…

 なるほど…隣国は、脅すより籠絡した方が、操りやすいと考えたのだろう。

 もういい、勝手にしろ。明日から執務室には来るな、執務は今後一切頼まん。

 定例会議にも出るな。敵国に落ちているお前など信用ならん」


「………は?お父様?どういう事です?そんなの困ります!」


「なぜだ?腹の子の父親に、

 こちらの動きを逐一報告しろと言われているからか?」


「…え?いいえ、いいえ!そんな訳ないじゃないですかっ…

 何を…疑っていらっしゃるの?」


「やはりな。出て行け、イメダリヤ。今すぐ」


「……っ!」


「ああ、それからお前の愛する騎士は既婚者だ。

 自国に妻と子供が2人いるそうだぞ」


「…は、…はい?」


「はっ、まさか知らなかったのか?調べればすぐ分かることだろう。

 それを承知で肉体関係を持ったのではないのか?」


「…っ…嘘ですっ!

 …そ…んな事…言って、私を動揺させよう、としたってっ…」


「騙されているのが分からんのか、馬鹿な娘だ。

 本人に聞いてみるがいい」


「お父様っ‼︎」



バタンッ



“ 君たちの為なんだ。


まだ、俺達の国王は君の国王を信用していない。

だから、君の父上の動きを逐一教えて欲しい。

もしも、国王が無駄な足掻きで反逆を考えたりしたら、

折角の同盟が無駄になるだろう?

大丈夫、君が監視して教えてくれれば、

万が一怪しい動きがあった場合、俺が内密に対処して事前に防ぐ。

俺を信じて、運命の愛しい人。


俺の子と君と将来、幸せに暮らしたいだろう? ”




彼は、そう言ってくれた…


そう言ってくれたのよ!



既婚者?それが何だっていうの!


私とは運命だって、言ってくれたもの。



そうよ。

黙っているのは、私を傷つけない為に決まってる。

後から出会ってしまって、

彼は、家族を捨てて、私と一緒になってくれるつもりなんだわ。


私は、幸せになるの。


今ままでは、この血筋のせいで政略結婚しかないと

諦めていたこの私に、敗戦して没落した王族の処遇に怯える日々の中で、

あの人は平等に優しく接して、手を差し伸べてくれた。

愛し愛される喜びを、素晴らしさを教えてくれた。


王族や高位貴族は、処刑されなかっただけ感謝すべきなのに…

敗戦国のくせに権威に必死にしがみついて、なんて惨めなの。


お父様…あなたは、いつまで国王面するわけ?


恥知らずなのは、

馬鹿なのは…あんたの方じゃないっ!


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