使命と永遠の光
「猶予は3日間。
あなた達は、早く隣国へ逃げなさい。
あなた達以外は、全て黒い蔓に捕らえられている。
助けようとすれば、自身も取り込まれる。
だから決して触れてはいけない。さあ、急いで」
ウィンディーネは、先ほどの女神の言葉を思い出し、
黒い草花の蔓に拘束され、苦しげに呻く貴族たちを横目に、
隣にいる王太子の手を引いて、歩き出す。
騎士4名もハッとして後を追う。
「ウィンディーネ…私は父上と共に残る…私も同罪だっ」
「急ぎましょう。時間がありません。
あの方の温情を無駄にするのですか?」
「馬車を用意します!持っていく物をご指示ください」
「物などいらないわ、騎士殿。
馬車の用意だけお願い!早く移動しましょう!」
母の形見のブローチはいつも身につけているから、これ以外は必要ない。
それでも、生活のためにと金品をかき集めてくれた騎士たちには、
後々感謝することになった。
私たちは、生き残って伝えなくてはいけない。
この悲惨な事実と結末を。
これが、救済された私たちの使命なのだから。
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「もう、綺麗さっぱり無くなったな」
「うん…」
「そう、落ち込むな。また新しい文明を生み出せばいい」
「そんなに簡単に言わないでよ。
この国だって、みんながみんな悪人ではなかったわ」
「審議にかけられた時点で、この国はもう終わっていた。
お前は人間に入れ込み過ぎだ。
さあ、ニケ、神聖の祈りと栄光の祝福を…」
「…うん」
“ ディヴァイン(神聖の祈り) ”
更地になった大地から、キラキラと眩い光が天空に向かって登っていく。
人間たちのまっさらな魂が、輪廻の輪に帰ってゆく。
何度見ても、美しくて悲しい光景。
私は、お前たちに永遠の光を約束した。
それは、死にゆく者と再び生まれ変わる者の魂を見届けること。
どんな罪人でも、罰を受け入れ魂が生まれ直せば、全ての罪から解放される。
そして、旅の途中の迷える魂には、共に寄り添い過ごしてあげよう。
苦しみも悲しみも、その後に訪れる歓びのため。
私はずっとここにいて、時の計らいと奇跡を引き寄せよう。
今日も明日も、そして千年後のその先も、
ずっと見守っている。
ずっと覚えている。
だから、生と死を恐れなくていい。
私の愛しい子供たち。
“グロリアス(栄光の祝福)”
何もない不毛の土地に、フワッと小さな雑草達が芽吹いた。
これで後は、何十年もかけて木々が育ち美しい自然が作られる。
「やれやれ、終わったな。何度経験しても人間の断末魔は堪える」
「死んだら、全て終わりだと思ってるからだろ?なあ、強制消去したのって
この国で何番目?」
「え〜と…ソドム、ゴモラ、アデマ…ゼボイム…」
「そして、今回消去した国は、ゾアル」
「ロトが逃げた国か。やっぱ娘を差し出すような、卑怯な性根の子孫の血筋は
変わらなかったか」
「ん?…あれ?これだけ?一番最初に海に沈めたのは?」
「たしか、“アトランティス” だっけ?」
「ああ、そうそう、それ」
ゼロスとクラトスが、何かワイワイ話しているが、
私は物思いに耽っていた。
偽りの存在だったけど、約1年間人間として生きて分かったことがある。
人間は非常に弱く、自信がなく、いつも怯えている。
しかし、武力や財力を手に入れた途端、自分を神とでも錯覚するのか、
豹変したように傲慢に振る舞い、争いを好み、他者を軽んじ踏みにじる。
私たち神と似た外見だが、精神性が全く違う。
だけど、国全体で腐ってしまっても、
その中で贖おうとする魂は、いつも同じだった。
あの6人の魂。
だから、その魂だけは出来るだけ救済した。
そして、それは決して無駄ではなかった。
“終焉の鐘” を使う間隔が、明らかに長くなっている。
「ニケ、戻ろう」
「うん」
私が、
ずっと見守っている。
ずっと覚えている。
だから、生と死を恐れなくていい。
与えられた生を慈しみ、楽しみ、終わったら帰ってくるといい。
どうしたら文明を進化させ、長く続けられるかを考えるといい。
そして、私に見せておくれ。
人間がどこまで、成長できるかを。
完
最後まで読んでいただき、感謝いたします。
最初のまったり塔生活から、怒涛の展開になり作者も面食らっています。
個人的に神様は、人間の願いを叶える都合のいい存在ではなく、
すごく厳しいお母さん的存在だと思っています。
次あたりから、恋愛系に挑戦してみます。




