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第87話 SEVEN ROOMS

「噛まれたらおれたちもリビング・デッドになる! 二人ともやつらの頭をねらえ! 頭を失ったらやつらは死ぬ!」


 カイの叱咤を受けジャックとエヴァンはなけなしの勇気を振り絞り、生きた死人に立ち向かいました。しかし


「うわ!」


 エヴァンの剣があっさり跳ね返されます。


「副団長!」


 生きた死人の剣を必死に受け、デブのジャックは悲鳴をあげました。


「こ、こいつら生きてるときより強いです!」


 かじられた頬の肉をプラプラ揺らすノエルと鍔迫り合いしながら、ジャックはうろたえました。


「おれ道場の立ち合いでノエルに負けたことないんだけど、前より太刀筋が鋭いし、圧力も強すぎます!」


「クソ、死の恐怖から解放されて剣に迷いがない。二人ともさがれ!」


 ジャックとエヴァンを自分のうしろにさがらせ、カイは総勢十一名のリビング・デッドに剣を向けました。

 剣を向け、しかしカイもうしろにさがりました。

 リビング・デッドの異様な迫力に気圧されるのです。


「ヒヒヒ、いいぞそのまま食っちまえ!」


 片目の大男チャッコが叫ぶとノエルとピーターが野犬のように跳躍しました。


「クソ!」


 カイの鋭い一薙ぎがノエルの足を切断しました。

 しかしノエルの勢いは止まりません!

 両膝からおびただしく流れる血をものともせず、ノエルは空中からカイに襲いかかりました。

 となりにピーターもいます。

 二人とも獲物を目の前にした歓喜に顔が歪んでいます。


(こいつら)


 恐怖で一瞬カイの手がすくみました。


「副団長!」


「危ない!」


 ジャックとエヴァンが悲鳴をあげた、そのときです。

 ノエルとピーターの頭が、突如膨張しました。


「え?」


 とまどうカイの目と鼻の先で、ノエルとピーターの膨張した頭は鈍い音立てて爆発しました!

 爆発はまだ続きます。

 あとに残った九名の内、五名のリビング・デッドの頭が次々膨張し、ボンッ、ボンッ、と鈍い音立てて爆発しました。


「な、なにが起きている!?」


 一拍置いて生き残った(?)四名のリビング・デッドの頭も膨張し、爆発しました。


「まさか!」


 チャッコはハッと空を見あげました。





 クロは暗い宇宙を漂っていました。

 チャッコの魔力を振り切るため、宇宙まで飛ぶ必要があったのです。

 魔法のシールドに包まれているので、体に異常はありません。

 クロは目を細めて地球を見ました。

 遠く離れていてもはっきり見えます。

 森の入口で蠢くリビング・デッドと、彼らを操る片目の魔法使いの姿が。


(生きた死人は全部で十一人ニャ。よし)


 クロは宇宙空間で合掌しました。


「ホラー!」


 魔法のシールドの中にクロの声が響きます。

 クロは合掌した手を地球に向かって突き出しました。

 するとクロの眼前に、七つの魔法陣が浮かびました。


「超長距離破壊魔法【SEVEN ROOMS】」


 クロが魔法名を唱えると、七つの魔法陣から一斉に白い光が放たれました。

 青い地球に向かって。





 最後のリビング・デッドの頭が吹っ飛び、ようやく辺りは静かになりました。

 片目のチャッコも、カイも、事態が呑み込めず呆然となっています。


「……終わったのか?」


 とカイがだれに問うでもなくつぶやいたときです。


「あれは?」


 エヴァンが空を指さしました。

 カイが見あげると、一個の火の玉が地上に降ってくるのが見えました。

 チャッコも釣られて空を見ます。


「い、いかん」


 チャッコは慌てて杖を空に向けました。

 宇宙から飛来したクロはマントのようにシールドを脱ぐと、地上に向かっててのひらをかざしました。


「ヒポポタマス!」


「ホラー!」


 二人の魔法使いの呪文が交錯し、チャッコの杖と、クロの眼前に浮かぶ魔法陣から光が放たれます。

 光は空中で激突し、クロの放った光がチャッコの光を飲み込みました。


「うわわ!」


 天から降ってきた光に槍のように貫かれ、チャッコの頭は粉々に吹っ飛びました。





「カミとの約束でおれたちは王子を直接警護できない。すまん」


「大丈夫ニャ」


 クロはカイがさげた頭を撫でました。


「これから隠密行動で離れたところから王子を見守る。水と食料を置いて行く。王子を頼む」


 カイ、ジャック、エヴァンの三名は疾風のように去りました。

 クロは死んだ騎士たちが埋められた地面に置かれた、墓標代わりの石に手を合わせ、森に入りました。

 カイからもらった水と食料を与えると、ブルックたちはみるみる回復しました。


「おお、クロ」


 ブルックはクロを見て思わず口もとを覆いました。

 クロの顔はうずくまったブルックのすぐ目の前にありました。

 立っているのに顔がそんな低い位置にあるのです。

 宇宙まで行って大量の魔力を消費したクロは、とうとう五歳ぐらいの幼女になったのです!


「無理をさせた。すまない」


「平気ニャ」


 すっかり小さくなったクロがケラケラ笑います。


「クロは小さくなっても元気だから日常魔法は使えるニャ。でも今日やったような大型魔法をもう一度やったら……」


「どうなるの?」


「たぶん死ぬニャ」


「クロ、この旅でもう二度と魔法を使ってはいけない。いいね?」


「わかったニャ」


 一行はその日森から動かず、地面に寝袋を敷いて早めに休みました。


「ありがとうクロ」


 ブルックは今日の感謝を込めてクロの頬にキスしました。


「クロ、愛してる」


 イオリもクロの頬にキスします。

 二人にキスされ、クロはうれしそうに笑いました。


「うふふ」


 ブルックとイオリにはさまれクロはすやすや眠りました。

 

(クロさん、王子さまとイオリさんの子どもみたい)


 眠りに落ちる前、アンナはそう思ってちょっと羨ましくなりました。

 三人の親密な関係が羨ましかったのです。


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