世界の洗礼
ポータルを抜けた先は、何もない荒野。
空気は淀み、あまり心地よい空間ではない。正直、長居はしたくないところだ。
「気味が悪いっすね…とっととアニキとリヴァさんを見つけて、こんなとこオサラバっす」
そうしてディノスを探して彷徨うこと数分…遠くで動く影を見つけた。——もしかして、あれだろうか?
「もしかして…今度こそ本当にアニキっすか!?」
アルマはその影に早足で近づく。しかし、近づくにつれ…その影はまたしてもディノスではない、ということに気づいてしまった。ただまあ、人間を発見することができたので進捗がゼロというわけではない。しかし…
「なんか、様子がおかしいっすね。大丈夫っすか?」
アルマは目の前の明らかに不審な人物に話しかけた。困っているのだろうか、いくつか携帯食や水などは持ってきたから必要ならこれを渡すとしよう。
しかし…それは確かに人の姿をしていたが、何やら様子がおかしく、身体から黒いモヤが出ていた。
「大丈夫っすか?お腹が減って困ってるならこれを食べるといいっすよ!」
アルマは満面の笑みでそう言いながらビーフジャーキーを渡す。これはゼルティアから貰ったのだが中々美味しく、ヤミツキになる味わいだ。きっと目の前の人物も気に入ってくれるだろう。
しかし次の瞬間、その人物は急に振り返り、アルマをじっと見つめた。
どうやら女性であるようだが、腕は紐のようにプラプラとしており、口にはナタを咥えていた、不可思議な女はおぼつかない足取りでアルマにゆっくりと近づいていく。
何か、気に障ったことを言ってしまったのかとアルマは思った。
「あ、すみませんっす。肉より野菜の方がよかったっすかね?それなら…」
最後まで言い終わる前に、少女は咥えたナタを思い切りアルマの方へ振りかざした。
とっさに盾を構えた事によりなんとか無傷で済んだが、アルマはかなりパニックになってしまった。
「いきなり何するんっすか!?僕だからよかったものの…そんなことしちゃダメっすよ!!」
しかし少女は攻撃をやめない。何度もナタを振り回し、アルマを攻撃する。
流石にこれはおかしい。はっきり言って、異常である。ただ、攻撃の重さ的には正直全然余裕で制圧できるくらいには貧弱だが…何があるかわからない。ひとまずここは少女から逃げることにした。
ある程度丸まりながら走った後、用心しながら振り返った。すると…
「これくらい離れれば…え?」
アルマが振り返ったとき、とても信じがたい光景を目にした。
少女は立ち止まり、自らの腹部をナタで切り落としていたのだ。
アルマが愕然としている中、少女は再び走り出した…先ほどとは比較にならないほどの速度で。
気が動転してしまい、アルマはガードをするのが遅れ隙を晒してしまった。
隙というのは罪である。
当然罪は償わなければならない。
「まずいっす…!」
盾でなんとか防ぎ、お返しにシールドバッシュを喰らわせようとした。しかし…
「!?」
いきなり少女は遠くへと吹っ飛んでいってしまった。
そしてそれを成し遂げたのは、弓を構えた別の女性。彼女がアルマの隣に立っていた。