全ての世界が交わるとき
ーーこれは、どこかであった物語ーー
「おろちばーす」にて、一匹のアルマジロが何かを探していた。
「アニキー?リヴァさーん?どこ行っちゃったっすかー?」
彼の名前はアルマ。この世界の住人…まあ、正確には違うのだがそれは置いておこう。
どうやら、ディノスという兄貴分とリヴァという友達を探しているらしいのだが…どこを探しても見つからないため、途方に暮れていた。
「おっかしいっすね…何も言わずにアニキたちがいなくなることなんていつもはないのに…」
なかなか見つからないことに不安を覚えて来た彼の前に、一つの龍の姿が現れた
「…あっ!もしかしてアニキ!?」
「残念、みんな大好きメギドラくんですね」
鰐を探していたのだが、別の存在『聖龍』が来てしまった。違う、今は違うんだ。
「なんだ、メギドラさんっすか…」
「なんかめっちゃ不服そうですねその顔。まあいいか…それより何か探し物ですかね?」
「あっ、そうなんすよ!アニキが…!」
アルマはメギドラに、尋ね人の話をした。威厳こそもはや何もない聖龍だが、こう見えて頼れるときは頼れる。もしかしたらと思ってダメ元で聞いてみると…
ビンゴ。メギドラには1つ、思い当たることがあったようだ。
「あれのことでしょうね…ちょっと、僕に付いてきてくださいね」
アルマがメギドラについていった先で見つけたのは、赤黒く渦巻いている謎のポータルだった。ポータルからは謎の気迫を感じ、常に引き寄せられているような感覚がする…修羅場慣れしているアルマですら少々不気味に感じてしまった。
そして、ポータルの近くに、ディノスとはまた違う、一際大きな龍が、少し苛立った目つきでポータルを全力で殴っていた。
「この我をここまでコケにするとは…!あ、メギドラ」
「あ、まだやってたんですね。…実は先日、突然この場所にこのポータルが開いたんです。ディノスたちは何時ごろいなくなりましたかね?」
「えっと…一昨日くらいからは見てないっすね…」
「このポータルも一昨日程から出現したものでしてよ!おそらくディノスたちもこのポータルの中に入ってしまった…いや、吸い込まれたと言った方が正しそうですわね」
先ほどまで怒り散らしていた姿からは想像もできないくらい冷静にそう推測する彼女は、『覇龍』ディオラムスである。彼女もまた、威厳はあんまない。
しかし、尊敬なる兄貴分がここにいるとわかればあとは簡単である。
「分かりました!そうとなれば一緒にアニキを探しに行くっすよ!メギドラさん、ディオラムスさん!」
メギドラとディオラムスに勝る者など世界にはほとんど存在しない。この二人を引き連れて、とっととディノスを連れ帰ればよいのだ。それに都合のいいことに、メギドラとディオラムスは現在フリー。つまり、問題なく彼ら二人を…
「すみません、僕たちは行けそうに無いですね」
「非常に不服ですが…厳しい、ですわね」
「えっ!なんでっすか!」
メギドラは実際に見せた方が早いとポータルに『小さな太陽』をぶつけこむ。しかしそれは、透明な見えない壁によって阻まれる。
「この通りです。どうやら僕とディオさんは向こう側の世界に入ることはできない…いや、何者かによってアクセスを禁止されてる?」
メギドラは深く考え込むが、その真実はわからない。あまりにも、未知数すぎる。以前メギドラは異世界へ行った経験がある。しかしそのときはこんなバリアに阻まれることなんてなかったはずだ。なぜ…?
「何度やっても駄目でしたわ、全く、この我の力を持ってしても突き破れないなんて…イラついて仕方がないですわ!」
「…流石に1人でこれに入るのは心細いっすね」
メギドラとディオラムスが入れないとなると、アルマが一人でこのポータルに入らなければならない。しかし、流石のアルマも未知のものに飛び込むというのは怖い。一瞬躊躇するが…
「心配しないでください、僕たちもポータルに何とか入る方法を探してますからね。準備ができ次第、そちらへ向かう予定ってわけですね」
「なるほど、っすね」
メギドラたちもやられてばかりではない。なんとかこちらもこのポータルの謎を暴いてカチコミをふっかけてやろうではないか。
「まあでもあまり当てにすんなですの。ま、大事な相棒くらい自分で取り返せますわよね?」
メギドラとディオラムス、それぞれの励ましを受けてアルマはポータルへと旅立つ決心をする。
「じゃあ、行ってくるっす!アニキ、リヴァさん、待ってろっすよ!」
そうしてアルマは、ポータルの中へと姿を消していった。そして、アルマには知らせなかった残酷な真実をメギドラとディオラムスは話し合う。
「…正直なところ、向こう側に行く手段はほぼないってのが我の見解ですわね」
「もしかしたら、内部から無理矢理呼び出される形ならいけるかもしれないですがね…向こう側で手段を見つけることもかなり難しいでしょうからね」
「まあまあ、こう見えて彼らもかなり成長しましたわ。きっと大丈夫でしてよ!」
「…そうですね、我々は彼らの帰りを待ち続けるとしましょうか」
メギドラたちはそう言い残し、ディオラムスと共にポータルを後にした。