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ドールズナイツ エクスレイド ~底辺エンジニア、隠しボスご令嬢にロックオンされる~  作者: 阿澄飛鳥
第3章

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第86話 俺はこの部屋の家具だ!

「なに? さっきのバァーって光とゴォーって音」

「んん……? すまない。俺にもわからない」


 シーヴェルトが急遽取った宿屋の部屋で、マリンが外を見ながら両手を広げて擬音を表現する。

 全身を使って過度に表現するこの仕草は王国や帝国では普通なのだろうか? と思いつつ、シーヴェルトは首を傾げた。


 方向からして閃光が奔ったのは首都の外だ。恐らくだが、自分たちには関係していない。


 それよりも、とベッドに座ったシーヴェルトはマリンに声をかける。


「マリン。ここもいつ露呈するかもわからない。今のうちに睡眠を取っておいた方がいい」

「あ、うん。いいけど……」


 マリンは言いかけて、右手をさすりながらもじもじとし出した。

 その様子に、しばし考えた後、シーヴェルトは答えを導き出す。


 この部屋はシングルの部屋だったのだ。

 

「す、すまない。急に取れる部屋がここしかなかったんだ。俺は廊下にでも出ていて――」

「い、いいよ! ヴェルが何かしてくるなんて思ってないから! そ、それに……」


 マリンは暗闇の中でもわかるほどに、顔を紅潮させながら続ける。


「一緒に……いてくれた方が安心、する」


 その言葉に、シーヴェルトは急に自分の体温が上がるのがわかった。

 マリンの方も恥ずかしそうにそっぽを向いていて、なんとも形容しがたい空気が部屋に流れる。


「きゃっ!?」

 

 と、そのとき、外から轟音がして窓が揺れた。

 マリンは驚いてシーヴェルトの横に飛び込んで、その腕に掴まる。


「な、なに? バレちゃった?」

「いや、今のは飛行型のゴーレムが飛び去った音だ。きっとさっきの光の調査に行ったのだろう」

「そうなの? はぁ、びっくりしたぁ……」

 

 言いながら、シーヴェルトは完全に別のことで頭がいっぱいだった。

 無我夢中で掴まったのだろう、腕になにか柔らかいものが当たっている。


 それはたぶん男にはない凹凸で、小柄ながらも着物越しにその存在を主張してくるのだ。今はまだ幼さの残るマリンも、いずれ大人の女性になるのだろう。けれど、シーヴェルトは連邦で好まれるようなお淑やかな女性ではなく、今のマリンのままで成長して、快活な女性になってほしい。そんな彼女と二人で街を並んで歩けるなら――。


 と、そこまで考えて、シーヴェルトはストンと勢いよく立ち上がった。


 ――なにを考えているんだ俺は……!?


「ヴェ、ヴェル?」

「お、俺は床で寝る!」

「ちょ、ちょっと――ヴェル!?」


 言い切ったシーヴェルトはマリンの制止も聞かず、素早い動作で木の床に寝転がる。

 そして体を一直線にして、微動だにしない。


「俺はモノだ! 俺はこの部屋の家具だ! そう思ってくれ!」

「なに言ってんの……?」

「何も言わぬ!」


 マリンは「言ってんじゃん」と的確なツッコミをしてきた。

 そして、そのまましばらくジト目でこちらの様子を伺っていたが、観念したようにベッドに横になる。


 それでいい。このままマリンを匿い、彼女の兄の下へ送り届けて、「守る」という約束は果たされる。それで終わりだ。それでこそこの国の男子だ。しかし――。


 ――しかし、本当にそれでいいのか?


 やがて静かに寝息を立て始めたマリンの横顔を見て、シーヴェルトは胸に宿る迷いを反芻するのだった。



 ◇   ◇   ◇



『観測より、所属不明機、画像解析より神樹連邦所属機と判断。増援接近、合計十機』

「増えたなぁ。ゆっくり作業できる状態じゃなさそうだな」


 俺はカタパルトへ上がるための昇降機内で、【ペルラネラ】をジャンプさせて上へと上がる。

 跳躍が足りなかったのか、カタパルトレールを頭上に上昇が止まるが、身近な突起を掴んで【ペルラネラ】は腕の力だけで這い上がった。


 中は暗い。ハッチを開かなければ外には出れない状態だ。


「ペル。アクセスコンソールはどこだ?」

『表示モニター右下。強調表示する。直接接続できると有難い』


 ピピっと赤く示された端末を見て、俺は【ペルラネラ】をその近くに跪かせる。

 そして、その細い腕を伸ばすと、指から触手のようなケーブルが出てきて、端末に接続した。


『アクセス開始……――⚠ハッチ強制開放⚠』


 ペルが言うや否や、カタパルト内の一部の機器が反応する。

 その表示もペルが情報を無理矢理書き換えているのか、グリーンになったりレッドになったりとせわしない。

 しかし、表示を見ていたのも束の間、重い音がして前方から淡い光が見えた。


『な、なんだ!?』

『動き出したぞ!?』


 開きかけているハッチの奥で、連邦の騎士たちが驚きに声を上げる。

 俺は素早くコンソールとの接続を切って、【ペルラネラ】を戦闘状態に移行させた。


 フットペダルを深く踏み込み、スロットルレバーを全開にして分離し、リクアクティブレバーを操作する。

 半開きのハッチに無理矢理、騎体をねじ込んだ【ペルラネラ】が、出口にいた二騎のゴーレムに襲い掛かった。


『まだ生きている遺跡が――なっ!?』

『どうし――ぐああっ!?』


 一騎はすれ違いざまにバイタルティテクターで首を飛ばし、もう一騎は頭部を掴んで地面に叩きつける。


「さぁて……。おっぱじめようか!」

「そうですわね。うふふ……!」


 外部に響くようにスピーカーをオンにした状態で、俺たちは宣言した。

 その声に、【サンセリテス】を調べていたゴーレムは一斉にこちらを向く。


『こいつ……! まさか凶鳥のメスガラス!?』

『なぜこんなところに!?』

「ワケわかんないし、紛らわしいあだ名ついてんな……」


 【ペルラネラ】が黒いからカラスなのか? と思いつつも、俺はリクアクティブレバーを動かして、アンスウェラーを肩部から抜くのだった。



 ◇   ◇   ◇



「どれ!? どれがそのスイッチ!? いっぱいあってわかんないんだけど!?」

『落ちついてください、リース様! まずは全てオフになっている各コンソールのマスタースイッチを上げてください!』


 CIC(戦闘指揮所)に慣れない梯子を使って降りたリースは、複雑な機器がそこかしこにある場所に頭を抱えていた。

 艦橋とは違い、目で見てどの席がメインの椅子なのかさえわからない。そもそもメインの椅子なんてものがあるのかすらわからない。


 ひとまず、サンに言われた通りに、各席を回ってそれらしいトグルスイッチを上に上げる。

 すると、モニターが次々とオンになり、薄暗かったCIC(戦闘指揮所)は徐々に光を取り戻した。


「つ、次は!? 次はどうすればいいの!?」

『はい! 次はリース様の今立っている場所から右斜め三十度、四メートル先の席にお座りください!』

「ここ!?」

『おしい! その隣です!』

「わかりづらーい!」


 叫びながら席に座ったリースは、その前に広がるモニターとスイッチ群を見て、はたと思い至る。

 この席は艦橋の席と同じ配置だ。これならなんとかなるかもしれない。


 なるかもしれないが……。

 

「で!?」

『艦内のシステムの自閉モードを一つずつ復旧させてください。タッチパネル上で操作できます!』

「ええと……自閉モード解除ってこれ!? って多くない!? 全部やんの!?」

『はい!』


 元気よく返事をしてきたサンに、リースは「わぁぁぁぁん!」と叫びで返した。

 しかし、叫びながらも目を見開き、震える手で操作を始める。


 ――あたしがやっちゃったことが原因なんだから、ここでやらないとあのボサっと男になにされるかわかんない! ドールももらえないかもしれない! そうなったらクラリスの騎士になるなんて夢のまた夢だぁぁぁ!


 そんな思考の下で、リースは歯を食いしばりながらシステムと格闘するのだった。

ここまで読んで頂きありがとうございます!

いかがでしたでしょうか?


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作者は執筆活動を続けることができています!


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