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底辺エンジニア、転生したら敵国側だった上に隠しボスのご令嬢にロックオンされる。~モブ×悪女のドール戦記~  作者: 阿澄飛鳥
第3章

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第73話 届かない手

「いつもごめんね~。エドガー様」

「いやいや、気にしないでくれよマリンさん! 荷物持ちくらいいつでもやるぜ!」


 放課後、エドガーは買い物に行くというマリンの荷物持ちのために街へ出ていた。

 エドガーとしてはマリンの気を引くためというのももちろんだが、一人で、しかも病み上がりで外出させることも心配だったからである。

 

 彼女には一目惚れを伝えたその日から熱心にアピールをしているが、今のところ進展はない。

 ただ、名乗り出ればマリンは嫌がることなく頼ってくれることが、男として嬉しかった。


「マリンさん、体の方はもう大丈夫か?」

「うん。嘘みたいにへっちゃら! お兄も早く良くなるといいんだけどね~。エドガー様、学校はどう?」

「いい感じだぜ。リオネルは合わねぇみたいだけど、俺は中々居心地がいいんだ」

「ふぅん。お兄は文句たらたらだったけど、そっか。エドガー様には合ってるんだね~」

 

 そんな話をしながら、エドガーはマリンの後をついていく。

 すると、不意に声がかかった。


「オイオイオイ、女の荷物持ちたァ女々しいことやってんじゃねェか。エドガー」


 エドガーが首を巡らせると、声の主はジェラルドだった。

 その後ろには何人かの取り巻きがいて、ジェラルドを先頭に街道を肩で風を切って歩いてくる。


「よう、ジェラルド。俺はマリンさんに惚れ込んでるからな! こんくらい当然だぜ」

「あァ……? 貴族が使用人にか? 馬鹿か、てめェ」

「俺はどう言われようと構わないぜ? 俺には俺の信念ってもんがあんだ」


 片眉を上げたジェラルドに馬鹿などと言われても、エドガーは余裕の笑みを浮かべた。

 エドガーはジェラルドに対してかつての自分と似たものを感じていて、そう言うだろうと察しはついていたからだ。


 それに加え、エドガーは使用人に恋をしていることを王国の学校で公にしている。

 周囲から同じようなことを言われることに慣れていた。


「友達? エドガー様」

「ああ、こいつはジェラルド。口は悪ぃが良い奴だぜ!」

「口が悪ィは余計だ」

 

 言うと、マリンはジェラルドに小さくぺこりと頭を下げる。

 

 ――くぅ~! しっかり使用人の仕草をできるマリンさん可愛いぜ!


 エドガーはそんなマリンと共に街を歩いていることに喜びを抱いていた。

 まだマリンとは恋仲と呼べるような仲ではないが、こんなにも可愛らしい女性を連れて歩いていれば誰もが羨むだろうと思うほどに。


 だが、エドガーがジェラルドを見ると、彼は何か驚きと困惑に満ちた表情だった。


「……オイ、女、ちょっと手ェ見せてみろ」

「え? なんでですか?」

「いいから見せやがれ!」


 突然、声を荒げたジェラルドに、今度はエドガーが困惑する。


「お、おい。ジェラルド。どうしたよ、いきなり」

「今、その女の手の甲に紋章みてェのが見えた。まさかてめェ……」

「紋章? 一体なんの話をしてんだ?」


 ずんずんと近づいてくるジェラルドに対し、エドガーはマリンを背に隠した。

 すると、後ろでマリンが呟く。


「紋章って、これのこと……?」


 呟きにエドガーが振り向くと、確かにマリンの手の甲にはうっすらと白い模様が浮かび上がっていた。


「どきやがれ!」

「――ッ! お、オイ!」

 

 それを見て、ジェラルドがエドガーを突き飛ばしてマリンの腕を取る。


「白い紋章……! やっぱり、お前ェ【巫女】だな!?」

「え、え? なんのこと? 巫女って――きゃ!?」


 ジェラルドは興奮した様子で、マリンの腕を強く引っ張った。

 エドガーは咄嗟に二人を引き剥がそうと腕を伸ばす。


「邪魔すんじゃねェ!」

 

 だが、ジェラルドは容赦のない裏拳をかましてきた。

 エドガーは反射的にそれを避け、戦闘体勢を取る。


「マリンさんを放しやがれ! じゃねぇと痛い目を見るぜ!」

「あァ? この女は俺サマが連れていく。それに文句があるってのか?」

「当たり前ぇだ!」


 エドガーは叫びながら突進した。

 

 兄貴――グレンからはなるべく問題を起こすなと言われているが、エドガーに迷いはない。

 今、攫われようとしているのはグレンの妹であり、自分が好きな異性なのだから。


「てめェら、やっちまえ!」

「おう!」

 

 すると、ジェラルドの取り巻きが前に出てくる。

 騎士学校で鍛えられた生徒複数人を相手取る形になった。

 

 だが、エドガーも素人ではない。

 王国の学校では上位の成績だった白兵戦を得意とするドールの騎士だ。


「シッ!」

「ぐおっ……!」


 先陣を切ってきた生徒のみぞおちに蹴りを見舞い、その後ろにいた生徒の顎に素早く拳を繰り出す。

 さらに羽交い絞めにしようとしてきた生徒には肘打ちをかまし、たった数秒で三人を無力化させた。


 そんなエドガーに取り巻きたちの勢いは萎縮する。


「そんな程度かぁ!? 連邦の連中も大したことねぇな!」


 エドガーが言うと、ジェラルドは舌打ちをしてこちらに向き直った。


「仕方ねェな。……神樹に願う!」


 マリンを取り巻きたちの方へ突き飛ばすと、ジェラルドは両手の手のひらを胸の前で合わせる。

 その仕草に、エドガーは直感的に危険を感じた。


 ――魔法か!? 聞いたことねぇ詠唱だが、発動する前に潰す!


「させるかよッ!」

「この者を大地に縛り付けろッ!」


 瞬時に判断したエドガーがジェラルドに殴りかかる。

 だが、その拳はジェラルドに届くことはなかった。


「ぐは――ッ!?」


 拳が届く直前、エドガーの全身に強力な加重がかかり、地面に押し付けられたのだ。


「重力……魔法っ……!?」


 食らったのは初めてではあったが、自分の体自体が重くなった感触にエドガーはその力の正体に気づく。


 しかし、主に重力魔法は自身の体の重さを操作したり、得物の重量を増して威力を強めるために使われるものだ。

 相手を動けなくするほどの強力な魔法を発動させるには、相応の魔力と長い詠唱が必要なはず。

 

 エドガーはなんとか体を起こそうとする。だが、地面についた手が埋もれるほどの加重に、四つん這いの状態を保つのがやっとだ。

 

「ハッ! この国で守護騎士の俺に勝てるわけねェだろ。てめェら、今のうちにコイツの体に教え込んでやれ!」

「エドガー様! 待って! やめて!」

「お前ェはこっちにきやがれ!」

 

 その場に唾を吐き捨てたジェラルドの声で、取り巻きたちが一斉にエドガーを蹴りつける。

 だがそれでも、エドガーは連れ去れられるマリンに必死に手を伸ばした。


「マリン……さん! ぐあっ! ぐふっ!」


 腹を蹴り上げられ、背中を踏みつけられながらも、重い体を引き摺って前へと進む。

 しかし、その手はマリンに届かない。


「エドガー様ぁ!」

「マ……リン……!」


 だんだんと暗くなっていく視界の中で、助けを求めるマリンが遠くなる。


 ――ちくしょう……! 好きな女すら俺は守れねぇのか!


 歯を食いしばって全身の激痛に耐えながら、エドガーは懸命に足掻いた。

 それでも前に進めたのはたった一歩にも満たない。


 悔しさと怒りの感情の中で、エドガーはついに力尽きて意識を手放すのだった。

ここまで読んで頂きありがとうございます!

いかがでしたでしょうか?


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いつも皆さまに応援頂いているおかげで、

作者は執筆活動を続けることができています!


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