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底辺エンジニア、転生したら敵国側だった上に隠しボスのご令嬢にロックオンされる。~モブ×悪女のドール戦記~  作者: 阿澄飛鳥
第2章

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第46話 神に殉ずる者の最後

『アレスとトリッシュを、やったのか……!?』


 ようやく【シニストラ】が立ち上がる。

 綺麗だった少女の顔面は砕けて内部構造が露出しており、眼球であるアイセンサーがギョロギョロとグロテスクに動いた。

 

「ええ、とてもお似合いな最後でしたわ」

『よくも、よくも我らが盟友を……! 悪女め、ここで成敗してくれる!』

「うふふ、その権利が貴女がたにお有りで?」

『覚悟ォォォッ!』


 【シニストラ】は真正面から突っ込んでくる。

 それをアンスウェラーで受け止めながら、【ペルラネラ】はブースターを吹かした。


「正義だの悪だのと、まるで神のようではありませんか! うふふ……あはははっ!」


 A.G.Bがなくとも、推力はこちらの方が上だ。

 鍔迫り合いのまま【シニストラ】を押しやり、崖に叩きつける。


「なんておこがましい! なんという傲慢っ! 自分たちが神の側に立っているというお考えこそ、貴方がたの弱さだと気づけなくて!? あはははははは!」

『我らは神に殉ずる者……! しかし、ここで貴様に負けるわけには……!』

「殉ずるというのなら死んで証明なさってくださいまし!? 私たちが悪であると! その罰を受けると!」


 崖に押し付けた【シニストラ】に対し、【ペルラネラ】がアンスウェラーを幾度となく打ち付けた。

 【シニストラ】の掲げる長剣は次第に刃こぼれし、ついにはその中ほどで折れる。


『我らの使命をっ……! ここで――ッ!』

 

 叫びながら、【シニストラ】は折れた長剣を捨ててこちらに組み付いてきた。

 そのとき、騎乗席の中に警報が鳴る。


『⚠注意:敵機体主機臨界。自爆と思われる⚠』


 それでも、あくまでセレスと俺は冷静だった。

 アンスウェラーを手放し、両腕のバイタルティテクターを起動する。


 そして、組み付く【シニストラ】の両肘を狙ってそれを射出させた。

 バキン、と音がして関節部に穴が穿たれ、続いて【ペルラネラ】が両腕を振るうと【シニストラ】の肘が切断される。


 支えを失って宙に舞った【シニストラ】を、俺たちは左足のミドルキックで蹴り飛ばした。


『おのれ! おのれぇぇぇぇぇぇ――ッ!』


 騎士の絶叫と共に、【シニストラ】が自爆する。

 それは巨大なキノコ雲を作るほどで、爆風で騎体が揺れた。


 だが、直前に展開した【ベラディノーテ】により、その余波でダメージを受けることはなかった。


「うふふふふ! あははははは! それが神に殉ずる者の最後というわけですわね! 良い! 良いですわ! ねぇ! 貴方様!?」

「ああ、あいつらは少しは骨があったみたいだな」


 俺はセレスに答えながらコンソールを叩いて【ベラディノーテ】を格納する。

 そして地面に落ちたアンスウェラーを回収したところで、後ろでクラリスが叫んだ。


「もうっ……! もうやめてください! こんな、こんな酷いこと……!」

「何を言ってますの? 自らの命と引き換えに私たちを殺そうとしたのはあちら……。私たちはただ降りかかる火の粉を振り払っただけですわ」

「ううっ……もう、もうたくさんなんです! 戦争で人が死ぬのは、もう嫌なんです……!」


 見れば、クラリスは手で顔を覆って涙を流している。

 俺はクラリスに何かを言おうと口を開けたが、言葉が出てこない。


 俺たちが敵を無惨に殺したのは間違いない。クラリスに俺が何かを言う資格なんてないと思ったからだ。


 泣き続けるクラリスに背を向けて、俺は巻き上がる爆発の煙をただ見上げるのだった。

 

 

 ◇   ◇   ◇

 


『なに!?』

「え? ――うわあっ!?」


 突然起きた爆発とその衝撃波に、ルーシーは驚く。

 慌てて騎体を立て直し、爆発した方向を見ると、それは神殿のある方角だった。

 周囲では困惑したゴーレムたちが戦いの手を止めてその大きな煙を見上げている。

 

「姐さんたちが何かやったんだ……」

「ルクレツィア様! 【ベネフィゼーザ】を!」

「あっ……そうだった!」


 ルーシーはエリィの声にはっとして、止めていた【オリフラム】の動きを再び始動した。

 空中に浮遊するエイプは夜目にはわかりづらいが、【オリフラム】の視界ではそれを捉えてくれる。


 リースが爆発に気を取られ、ただ浮遊するだけになっていたエイプをルーシーは連続で斬り払った。


『っ……! あんたたちは囮だったってわけね!』

「だったとしても、リースを止めるよ!」

『その言い草、ウザい!』


 言葉と共にエイプからの射撃が飛んでくる。

 それを転がって回避しつつ、接近したエイプを斬り落とした。


『あたしは神殿に向かう! こいつの相手は任せたわよ!』

『お任せを! 聖母様!』

『うおおぉぉぉぉ!』


 リースの呼びかけに、皇国のゴーレムたちが一斉にこちらに向かってくる。

 【ベネフィゼーザ】がブースターを起動して離脱しようとするのが見え、ルーシーはそれを追うために跳躍した。


「姐さんたちのところには行かせない!」

『あんたたちに構ってる暇なんてないのよ!』


 空中でエイプが狙ってくる。

 それを起動したブースターで回避しつつ、【ベネフィゼーザ】へ斬りかかった。だが――。


『聖母様ッ!』


 横合いから【ベネフィゼーザ】を突き飛ばしたゴーレムに、剣が深く食い込む。

 派手な火花が散って、そのゴーレムが爆散した。


『そいつを行かせるな!』

『聖母様をお守りしろ!』

「くぅっ……!」


 死に物狂いで【オリフラム】に飛び掛かってくる皇国のゴーレムたちに、ルーシーは歯噛みする。

 ラハト軍の攻撃を受けながらも【オリフラム】に集中するその執念に、手加減なしで応戦せざるを得ない。


「ルクレツィア様! 仕方がありません! 【ベネフィゼーザ】はグレン様たちにお任せしましょう!」

「くそっ……! ぐあっ!?」


 近くに着弾した砲撃に、【オリフラム】がバランスを崩した。

 その隙に皇国のゴーレムたちが足にしがみついてくる。


「やるしかないのか……!」


 ルーシーは苦しく呻き、足元のゴーレムの騎乗席に剣を突き立てて、再び跳躍した。

 

 前からは剣すら捨てて突っ込んでくる皇国軍、後ろには勝機見たりと攻勢を強めるラハト軍がいる。

 その中心で、ルーシーは近づいてくる敵に向かってひらすらに剣を振るうのだった。



 ◇   ◇   ◇



「うん、いいね。クラリスの確保には成功したみたい」


 円盤状の機械のある部屋で、リリーナは入った情報に笑みを浮かべる。


「しかし、陛下」

「お母さん、でしょ。今は家族しかいないんだから」

「……母上、【ベネフィゼーザ】の処遇をあの男に任せてよろしかったので?」

「なんだアルベルク。母上の決定に異議があるのか?」


 疑問を呈した男――アルベルクに、棘のある声音が上がる。

 

「そうではない、ベルナデット姉上。【ベネフィゼーザ】の希少性を考えれば破壊されるには惜しいと言いたいのです」

「騎士団長と呼べ!」

「ああ~、もう喧嘩しないで! あと今は家族同士なんだから堅苦しい上下関係はなし! わかった? 二人とも」


 リリーナが手を叩いて言うと、二人はおずおずと黙り込んだ。


「私はね。この機会にあの子がどういう人間かを知りたいんだ」

「そのために【ベネフィゼーザ】を試金石とすると」

「うん、そう」


 アルベルクに、リリーナは頷いて、話を続ける。


「けれど重要なのは【ベネフィゼーザ】じゃない。その騎士だよ。自覚はないだろうけど、あの二人には深くとも浅からぬ因縁があるんだ。それ次第では使える人材だと思うの」


 その言葉に、ベルナデットが前に出てきた。


「まさか、【セプテントリオン】にお加えになるおつもりで?」

「ぴんぽーん。そのまさか!」


 人差し指を立てて可愛くポーズを取ってみせると、ベルナデットの顔が険しいものになる。


「そんな顔しなくてもいいじゃない。可愛いでしょ?」

「母上の仕草に目くじらを立てたわけではありません。新参者を【セプテントリオン】に加入させることに、です」


 新参者――ついこの間まで平民だったグレンを【セプテントリオン】に加えるのは、プライドの高いベルナデットにとって拒否感を覚えるのは仕方のないことだろう。

 

 それはリリーナ自身もよくわかっている。


 しかし、それを加味しても手の内に収めておく価値があると、リリーナは判断していた。


「でも【凶兆の紅い瞳】を従者にしてる騎士だよ? 放っておくより手の届く場所に置いておきたいじゃない? それに……働き次第ではルーシーちゃんもね。あっちはエリィが舵取りをしてくれるから大丈夫だよ」

「……それが母上の決定であれば、従います」


 うんうん、とリリーナは頷く。

 異議を唱えながらも決定には従う――それがベルナデットの良いところだ。アルベルク同様、従順過ぎないほうが人間らしくて良い。


 リリーナは円盤の上に表示された男のマークを見ながら、そう思うのだった。

 

 

ここまで読んで頂きありがとうございます!

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作者は執筆活動を続けることができています!


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