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ドールズナイツ エクスレイド ~底辺エンジニア、隠しボスご令嬢にロックオンされる~  作者: 阿澄飛鳥
第1章

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第11話 俺たちの運命

 戦いを終えた俺たちは、【ペルラネラ】で城門をくぐって街に戻る。

 ゴーレムが出撃するための街道を通るが、やはり足元に人がいるというのは危なっかしくて慣れない。


 住民たちは夜襲の中、疲弊した顔でも【ペルラネラ】を一目見ようと群がっていた。


 こちらに手を振ってくる者、喝采を送ってくる者、物珍しく見上げる者。


 人々の反応は様々だが、街を守ったことに対して感謝や労いの言葉をかけてくる者が多かった。

 俺はそれを聞いて、胸に暖かいものが湧き出てくるのを実感する。


 俺は街を守ろうとか、英雄になろうとか思ったわけではない。

 

 ただセレスを、妹を守ろうと思って走り出した結果がこれだ。

 だが、それが結果的に人々を守ることに繋がったのなら、それでいい。


「こんなに歓迎されているのは、この子が可愛いからかもしれませんわね」

「それもあるかもなぁ」

『肯定』

 

 自画自賛……。

 

 たしかに体長が十五メートルほどあるとはいえ、【ペルラネラ】の外見はお人形のそれだ。

 威圧感のあるゴーレムと比べると親しみやすいのかもしれない。


 そうしてやっと工房につく。


 まだ煙がくすぶっているところはあるものの、あらかた火は消し終わっているようだ。

 その奥のスペースに【ペルラネラ】は膝をつき、騎乗席の前へと手を差し出した状態で停止する。


 そして、俺はセレスの手を引いてハッチから出た。


 それを待っていたのは、兵士や使用人たちの拍手と声だった。


 俺は周囲を見回す。


 同僚は誰も彼も顔を煤だらけにしていて、怪我を負っている者もいる。

 騎士たちも目にクマを作って、それでも俺たちの帰還を祝福してくれていた。


 父さんも、母さんも、この景色を見たんだろうか。


 騎士だった両親の背中が、目をそらしていたものが、やっと近くに感じられる。


 俺は込み上げるものがあって、ついセレスの体を抱き寄せた。

 セレスはそれに身を任せて、ぴったりと俺にくっついてくる。


 俺たちを手のひらに乗せた【ペルラネラ】は、自身の判断でその手をゆっくりと降ろした。


 そうしてやっと地面へ降り立った俺たちに近づいてきたのは、ガヴィーノとロイクだ。


「グレン、セレスティア様、お見事でございました」

「ううっ……! 僕はグレン殿ならやってくれると信じていました……!」


 俺は男泣きするロイクの肩に手を置いてやる。


 こういうとき、なんて言えばいいのかわからない。

 みんなからの喝采を浴びて、敬意を示されて、どう応えればいいのかわからない。


 俺が少し困った表情をしていると、それを察してくれたのだろう。

 セレスが耳打ちしてきた。


「いいのです。ただ、ただ胸を張ってください。私の騎士として」

 

 そういうものか。


 セレスに手を引かれ、みんなの前へと一歩出る。

 だが俺は少し自信がなくて、セレスの手を強く握り返した。


 そのとき、人混みが割れる。


 そこにはセレスの父親――アルトレイド辺境伯がいた。

 彼もまた騎士の装いを着て、全身を煤で汚している。


 きっと辺境伯も戦おうとしたのだろう。


「セレスティア……」

「お父様」


 ゆっくりと歩み寄ってきた辺境伯は、複雑な表情をしていた。


「その男に決めたのだな?」

「はい。セレスティアはこの方と、そして【ペルラネラ】と運命を共にします」

「その道は険しいものになるぞ」

「それが……――」


 セレスは俺と手を絡ませて、はっきりと言った。


「――私たちの運命なれば」


 辺境伯はその言葉に、ゆっくりと重く頷く。


「グレン・ハワード」


 名を呼ばれて、俺は背筋を伸ばした。

 強い視線を受けて、俺は息を呑む。

 

「娘を頼めるか」

「はっ!」

 

 俺は気づけば、やり慣れない敬礼を返していた。


 ひときわ大きな喝采と歓声が上がる。

 気づけば遠巻きに見ていた同僚や騎士、使用人たちに囲まれていた。


「騎士グレン・ハワードとセレスティア様に星々の加護あれ!」


 ガヴィーノがそう叫んで拳を突き上げると、皆がそれに続く。

 

 これが、俺たちの選んだ道。


 一度取ったこの手はもう離せないのだろう。

 けれど、それでもいい。


 これまで日陰に籠もっていたセレスが皆に祝福されて、それを喜んでいる。

 ここにいていいのだと、彼女は居場所を見つけている。


 その笑顔をそばで見られるなら――。


 ――俺は運命を受け入れる。隠しボスのご令嬢にロックオンされてしまった俺の運命を。



 ◇   ◇   ◇



 領主の屋敷に用意された俺の部屋で、メイド服に身を包んだマリンが紅茶を入れてくれる。

 メイド業なんてやったことないだろうに。けれど意外にもその所作は堂に入っていた。

 

「いやぁ、ホントにびっくりだよねぇ。先週まで技師と家事手伝いだったあたしたちが騎士とメイドだよ? こんなことあり得るんだねぇ」

『同意』

「ペルちゃん可愛い。なんか家族が増えたみたい」

『嬉しみを感じる』

「ナチュラルにドールと会話しないでぇ……?」


 マリンの淹れた紅茶にやや渋みを感じながら、俺はげんなりした。

 俺の腕輪からは絶えず音声と文字列が飛び出していて、マリンとガールズトークを楽しんでいるのだ。

 

「お兄、もっとしゃんとしたら? 叙勲式も終わって気が抜けてるのはわかるけど」

「……慣れないことばっかりでさすがに限界」


 先日、俺は略式ではあるが正式に騎士として叙勲を受けた。

 それからはガヴィーノには騎士のなんたるかを叩き込まれ、ロイクなどの騎士たちと体を鍛える日々である。


 正直言ってこの目まぐるしく変化した日々に体がついていけていない。


 ソファで俺が液体みたいに溶けていると、腕輪から音声が響く。

 

『マスターは他の騎士と比べ、基礎体力に劣る』

「ロイクとかと比べんな。あいつフルマラソン走ってピンピンしてるぞ」

『マスターもピンピンしろ』

「その絵文字腹立つぅ……」


 果たして、コイツは俺のことをちゃんとマスターとして敬っているのか怪しい。

 マリンやセレスとはなんだか仲が良いようだが、俺に対してはいつもおちょくる姿勢である。


「じゃ、お兄、あたし仕事あるから」

「ああ、頑張ってな」


 そう言ってマリンが部屋を出ていったあと、俺は虚空に向かって話しかける。

 

「なぁ、ペル」

『なんだマスター』


 言いにくい騎体名からつけた愛称で呼ぶと、【ペルラネラ】はすぐに返事をしてきた。

 

「前に言いかけてた、未来をなんとかって、どういう意味だ?」

『そのままの意味。マスターはこれから起こることを知っている』

 

 それを聞いて、俺はがばっとソファから飛び起きる。

 

「俺が転生者だって知ってたのか?」

『その呼称については不明だが、当方を清掃している際の独り言でそう判断した』

「あ……」


 そういえば、【ペルラネラ】の掃除中にそんな愚痴を吐いていた気がする。

 二度目の人生なのにこんな雑用を~、とか、もうじき戦争だってのに、とか。

 

 ……今後独り言はなるべく控えよう。


 どこに耳があるかわからないし、俺が転生者だとバレると面倒なことになりそうだ。


 俺が自戒していたそのとき、ドタバタと騒がしい足音がして、ノックもなしに扉が開かれた。


「ぐ、グレン! 大変だ!」


 出てきたのはガヴィーノだ。

 今日は俺と同じで非番だったはずだが、なんの用だろう。


「ルクレツィアと名乗る者が城門に来て、お前に決闘を申し込んでいる!」

「お断りしま――……ルクレツィア?」

「もう来ているのだ! ドールに乗って!」

「はぁ!?」


 俺はその名前に聞き覚えがある。

 というか、凄く馴染みがある名前だった。


 なぜならその名は――主人公の名前だったのだから。

ここまで読んで頂きありがとうございます!

いかがでしたでしょうか?


「面白い!」「続きが読みたい!」


そう思って頂けましたら↓の☆☆☆☆☆欄にて★★★★★での応援と、ブックマークをお願いいたします!


いつも皆さまに応援頂いているおかげで、

作者は執筆活動を続けることができています!


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