感銘を受けた
私はこれまで数々の狂人に出会ってきた。
道端に全裸で立っている女性、ハンバーガー屋の隣の席(カウンター)で叫びながら暴れるおじさん、Tシャツの露出狂、変な声を出しながら後ろをピッタリついてくる男、痴漢、常時デスボイスの隣家の妖怪、etc...
どの狂人も、映画の主人公になれるのではないかというくらいにぶっ飛んでいたのだが、今日、彼らを超える衝撃に出会った。
とはいえ、私は何も被害を受けていないし、会話もしていない。ただ目撃しただけである。
朝、日課の散歩をしていると、スーパーとホームセンターが一緒になったところの敷地から、大きなリュックを背負った黒い服の男性が出てきて、私の前を歩く形になった。
男性は少し歩くのが遅かったので、しばらく歩いたところで並んだのだが、なにやら様子がおかしい。
なんというか、彼からは生気を感じないのだ。もしや死人か?
チラッと横目で見てみると、男性は黒縁のメガネをしており、なんとなく顔の上半分が白っぽく見えた。
この時点で私の脳内は「もしかして:仮面」一色になっていた。
どうにかして正面から見ようと思った私は、まずスタスタ歩いた。
そして、十分な距離を取ったところで立ち止まり、ポケットからスマホを取り出し、電話がかかってきたフリをして耳に当てた(盗撮とかはしないから安心して)。
「ほー」とか「ふー」とか「ふんー」とか「ポケモンじゃね」とか言いながら、脇腹をかきながら(これは本当に痒かった)何気なく周りを見渡すような感じで男性の顔を視界に入れた。
仮面だった。
鼻の下あたりまで覆われるタイプの、ラムシュタインのDu Hastのミュージックビデオに出てくるような仮面をつけているのだ。
私は戦慄した。
今年一番の衝撃だった。
例えるなら、P地獄少女覚醒3000verで先ローリング発生からの弱展開に次ぐ弱展開、もちろん蝶役物は完成せず、全く期待出来ない状態で依頼者リーチに発展。タイトルが出たところでいつもの癖でボタンを押したらデンジャー柄タイトル(大当たり濃厚)になって「えぇーっ!?」と叫んでしまうほどの衝撃だった。
そして。よく考えたらこの男性、スーパーかホームセンターの帰りなのだ。
仮面でスーパー行ったの!?
私は唖然としながらも、彼が通り過ぎるまではポーカーフェイスで存在しない相手に「ふー」とか「ほー」とか「ポケモンじゃね」とか言い続けた。
超カッコイイなと思った。
私も仮面、つけてみようかな。