山寺の素顔
「あぁ・・・やっちまったな」
晴の顔は、どこへ行ったやら。
戻ってきた邪神が呟いた。
「厄介だぞう。人間を倒すと」
邪神は、唇を曲げた。
「これで、悪役決定だな」
「違うでしょう」
封雲は、憤慨した。
「人間達に、滅ぼされたんです。隠れて、静かに暮らしていたのに。敵にしたのは、人間でしょう」
「人間なのに、寺を庇うんだな。」
「僕らは、何もしていない。行く先を失った者達が、集まっていただけなんだ」
「人間は、それを恐怖と見るんだ。得体の知れない奴らを嫌う」
「僕らは、何もしていなかった。害のある妖退治をして、貢献していたと思っていた」
「本当に、貢献していたと思うか?」
邪神は、笑った。
「お前達が、力を見せる度に、人間達は、恐怖を感じていた。その力が、自分達に及ぶのを恐れた」
「・・・だからか」
右手に数珠を収めた颯太が言った。
「だから・・・みんな、殺されたのか?」
「颯太・・」
親を二度、殺されたようなものだ。
封雲は、颯太が、親の愛情に飢えている事を知っていた。
親に捨てられたと聞いていた。
「僕がいれば・・」
「颯太」
邪神の目が揺らいでいた。
「お前がいなくて、正解だったのさ」
邪神の言葉に、封雲が頷いた。
「お前がいたら、大変な事になって」
「僕がいなくて良かった・・・?どういう事?」
「こう考えた事はないか?人間達の狙いがお前だったと・・・」
「僕?」
邪神の頬に、誰かの髪が触れた。
宙から顔を出した音羽と気付いた。
音羽は、首を振る。
言うな・・・て事か。
邪神はため息をつく。
「音羽。もう、長い事、人間じゃないのに、人間臭いな」
音羽が、顔を真っ赤にして、宙から飛び降りてきた。
「知らない方が幸せな事がある!颯太に知らせて、どうする?」
「知っておくべきなんだ。君だって、どうして、ここに存在しているか、知っていりんだろう?」
「私は・・・」
唇を噛み締め、プイッと宙に飛び込んだ。
「颯太・・・やはり、お前は知って置いた方がいいと思う」
時折、邪神は、人間臭くなる時がある。晴の人格の上に、邪神が、居座っている様なそんな感じだ。
「どうしても、その問題が、立ちはだかる。お前は、そんな存在なんだ」
「言うんですか?」
封雲が、邪神を見上げた。
「お前は、玉藻御前の息子なんだ・・・寺は、お前を匿った。そのせいで、寺は、そのせいで、焼き払われた」
「誰なんです?人間と言うだけでは、わからない!」
自分が、生まれた時、母親が失踪したと聞いていた。自分のせいだと思っていた。
まさか・・・母親が、あの九尾の狐だなんて。
颯太は、自分の姿から、察してはいたが、改めて、そう言われると深く傷ついていた。




