君を君を守りたい。
「おっと!」
晴は、目を見開いた。
投げつけられた数珠は、弧を描いて、先ほどの蛇と同じように、宙を回転し、その青年に向かっていた。
蛇なのか?
それは、黒く艶やかに、渦まき回転していく。
次第に蛇の体は、太く、黒く艶やかな体は、緑色へと変わっていく。
「蛇じゃない」
颯太は、見た。
「龍だ」
投げつけられた龍は、弧を描いながら、青年の剣を持つ右手に絡みつく。
「えぇ?」
引き剥がそうとするが、巻き付いた龍は、いとも簡単に、燃え盛る炎を鎮火させてしまった。
「何?」
顔色の変わる青年。
「やっぱり、呪いは生きていたのか」
数珠が離れた颯太の姿は、もはや、人間ではない。
「退治しきれてなかったか・・」
炎の消えた剣を捨て、颯太を抑えにかかる。
「止めろ!」
封雲の札は、人間に効かない。
「どうしろって?」
飛びかかられて颯太は、怯んだ。
「人を相手になんて・・」
「そんな事を言っている場合か?」
「だけど」
人間を妖が、倒してしまったら、まずい状況になる。
今、
颯太の姿は、人間でない。
「だからって・・」
青年の力は、人とは、思えない程、強く、本気になりざるを得ない。
「かと言って・・・」
邪神は、晴のままだ。
「邪神!」
起きてくれ!
そう願った。
本気になってしまったら、
この人間を殺してしまったら、
自分は、本当に妖になってしまう。
「悩んでいる場合か?」
どうする?
自分には、そんな力があるのか?
悩んでいる間に、
自分の首に掛けられた手に力が入っていく。
苦しい。
このままでは、
その時、颯太は、剣に絡みついた龍と目があった気がした。
「その目は・・・」
見た覚えがある。
その目は、
颯太のあの日の記憶を呼びもどした。
寺に預けられて馴染めなかったあの日。
いつも、誰もいなくなった寺の本堂で、
一人、残った颯太に声をかけてくれていた・・・一人の師匠。
「師匠?」
同じ目をしている?
その目があった時。
颯太の体の中を何かが、流れた。
胸の奥で、何かが、弾けた。
誰かが、謝っていた。
「ここに置いていくのを許してほしい」
誰だったか、思い出せない。
でも、自分は、いらなくなって捨てられた訳ではない。
自分を寺に置いて行ったのは、
「愛情があったから」
あの本堂で、教えてくれたのは、師匠。
颯太の掌が熱くなった。
「ごめん・・・」
そう呟くと、颯太は、青年の額に手を触れた。
「やった!」
思わず、封雲が呟く。
その声と同時に、青年の体は、崩れ落ちた。




