寺を守る者は、人を裏切るのか
「厄介な」
邪神の顔は、嫌悪感で一杯になった。
「人間は、嫌いだ。当然、颯太を守りたい。だけど、ちょっと、厄介な奴だな」
「無理しなくていいですよ」
颯太の姿は、不安定だ。
「寺が襲われたって聞いた時、絶対、仇をうつって決めていたんだ」
「颯太!ダメだ。そいつには、敵わない」
封雲は、縛られたまま、ジタバタしていた。
「そいつは、強い!そして、どうしても伝えておきたい事がある」
「それは、落ち着いてから、言うんだな」
邪神の両目に、燃え盛る炎が見えていた。
「火は、嫌いなんだが」
「私も・・・」
そういうと音羽は、宙に消える。
「こんな奴らをどこで、育てていたんだ?」
邪神が呟くまもなく、その青年は、切りかかってきた。
細かい火の粉が降り注ぐ。
「本当に、こいつ、人間なのか?」
叫びながら、邪神は、封雲の縄を解く。
「精鋭部隊ですよ。妖専門の・・・こいつら、寺を簡単に潰しやがった」
「こいつら?」
颯太は、唾を飲み込む。
「仲間がいるのか・・・」
「あそこで、おねんねしているのが、仲間だ」
邪神は、戦う気がしないのか、木の上に座り込んでいた。
「おい!晴先生!」
颯太が、邪神の中の晴を呼び起こそうとする。
「しっかりしてくれよ」
「晴は起きないよ」
邪神は、笑う。
「人間対人間か・・・昔から、よくやるよな・・・まぁ、颯太が、どちらに入るかわ、謎だがな」
「む・・・」
颯太の右手首で、生き物の様に、数珠が渦巻く。
「颯太・・・数珠だ」
「え?」
封雲が、叫ぶ。
「颯太を守ってくれているのは、師匠なんだ・・・その師匠も、颯太と同じ」
二人の会話を、邪魔するように、青年は、切り掛かる。
封雲は、慣れた手つきで、札を飛ばす。
炎の剣先に、ふだが、絡みつき、焼けつく。
何度も、繰り返す。
「いい加減、決めろよ」
邪神が、退屈そうに呟く。
「人間なんて、簡単に壊れるだろう?」
「人間を殺すなんて、できないんだ!晴!」
突然、思い出した蚊のように、金鎖を引いた。
邪神の首から、下がっていた金鎖だ。
「え?」
思わず、邪神は、木の上から転落した。
そこに居たのは、邪神ではなく、晴だった。
「どうした?」
「晴先生!」
邪神でなければ、勝てない。
だが、邪神には、戦う気がない。
剣先を封雲の札で、交わすが、今ひとつだった。
「颯太!数珠だってば」
「何?」
「数珠を投げつけろ!」
「これをか?」
「そうだ!」
次に切り掛かって来た瞬間、
颯太の手が、動いていた。




