疑惑。人間だから。
「待って!」
邪神は、振り向くと、その針の方向に飛び込んだ。
人間には、敵わない動き。
の筈だった。
この地で、邪神より、早い生き物なんて、居ないはずだった。
・・・が。
「いない」
邪神は、晴の顔を激しく歪めて、悔しがった。
「そんなバカな」
自分の力が、及ばないなんて。
「大丈夫か?」
封雲の状態を心配そうに、見守る颯太に声をかける。
「多分・・・気を失っているだけ」
音羽が、宙から顔を出す。
「封雲・・」
颯太は、封雲の顔を叩いてみる。
針は、銀色をしており、何本も首の付け根に刺さっていた。
「なんだよ!これは」
邪神は、針を一本ずつ、抜いていく。
「こんな、面倒な真似する奴・・」
邪神は、呟く。
「人間だろう・・・」
颯太は、邪神の顔を見た。
時折、この邪神て奴は、人間より、人間らしく感じる事がある。それとも、自分が、邪神の人柄?に慣れてしまったのか。
晴でない人格にも、慣れている。
「あのさ・・・本当は、いい奴なんじゃない?」
音羽に囁く。
「そうか?」
音羽は、宙から顔を出して、邪神をじっと見つめていたが、目が合うと、さっと隠れてしまった。
「なんだよ・・・」
邪神は、そう言いながら、封雲の頬を叩いた。
「起きろよ!毒じゃない。意識を失っただけだ」
何度も、頬を叩くと、ようやく、封雲が、意識を取り戻した。
「う・・・ん」
「大丈夫か?」
駆け寄る颯太。
「うわぁ!」
一瞬、颯太の姿に驚いて、後ろにのけ反る封雲。
「まぁまぁ・・・」
そう言いながら、縄を解く邪神に再度、驚く。
「何なんだよ!あんたは!」
捕まえたり、逃がしたり、邪神の行動は、楽しんでいるとしか、思えない。
「まぁ・・・直接、聞きたい事があってな」
「一体、あんたは、誰の味方なんだ?」
「味方?誰の味方でもない。興味がある事だけ、関わっていく」
「颯太が、気になるかよ。お前達も」
「颯太が、気になるのか?逆にお前も」
封雲は、顔を歪める。
「どうやら、お前は、颯太も知らない事を知っているようだな」
邪神の声は、恐ろしく低かった。
封雲が、ゴクンと唾を飲む音が聞こえた。




