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変わらない怨念

「止めろ!」


邪神が叫んだ。


自分でも、人と言う器を無くした自分が、どうなるのか。


わからなかった。


音羽が、大きく口を開いたと思った。


危ない。


誰もが、そう思った。


大きな手が伸びてきた。


邪神の両手だ。


しっかりと伸び、長い指先が、颯太の体を抑える。


「え?」


颯太は、振り向こうとした。


自分の体の中から、炎が吹き出した。


二人の人間を庇うかのように、邪神が立っていた。


「何が・・・」


後方に、車が吹き飛んでいた。


邪神が、2人の人間を抱え上げ、背中から生えた、もう一つの手が、


颯太の頭を押さえていた。


「一体・・・僕は」


「そうだよ・・お前」


邪神は、抱えていた2人の人間を地面に横たえた。


「ダメだな。やはり、人間の血がそうさせるのか?」


「どういう事だよ」


邪神の背中から生えた手が、シュシュルと音を立てて、萎んでいく。


「風雲の名前が、起爆剤か」


自分でも、気が付かなかった。


風雲の事が、引っ掛かっている。


一番信頼し、友人でもあり、ライバルだった。


こんな姿になって、隠れていたいのに、風雲が、教えてしまうなんて、


それも、的かもしれない人間に。


どこまでも、風雲は、自分の事を憎んでいるのか。


「風雲の事は、諦めろ」


邪神は、吹き飛んだ粉塵で、汚れた体を払った。


「所詮、人間なんて、そんなもんだ。どうしても、自分を先に持ってくる。

お前も、そんな人間にならないで済んだ。よかったじゃないか」


「簡単に言わないでくれる?」


「まぁ・・・今じゃ、俺と同じ立場だもんな。そう、がっかりするな」


邪神は、颯太の頭に、生えた長い耳を優しく撫でた。


「化けてしまったのか、本来の姿なのか」


自分でも、本当の姿なのか、化けてしまったのか、わからない。


「少なくとも、寺に秘密があったんだろうな」


邪神は、足先で、気を失った2人の人間の顔を蹴っていた。


「こいつら、本当に気を失っている」


何度も、顔を蹴っている。


颯太は、止めようかと思ったが、思い直した。


自分を襲おうとしたのは、人間なのだ。


今は、邪神と同じ類になってしまった。


「俺と同じだ・・・なんて、悲しい顔するなよ」


邪神は笑った。


「その風雲とやらに、逢いに行くか?」


「え?」


「俺を誰だと思っている?」


邪神は、そう言うと、音羽を、呼び寄せた。


「いつまで、知らんぷりしている?」


「気がつくまで」


「やれやれ・・・」


「だって、聞かなかったでしょう?」


「確かにそうだが・・」


音羽は、大きく口を開けていった。


それは、宙に一つの世界を、広げていった。


混沌とした闇の世界。


その中に。


一人の少年が現れた。


木から吊るされ、気を失っているようだった。

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