全く、人間て奴は。
「どうして、そんなに、お人好しなのさ」
邪神は笑った。
「見ろよ。音羽だって、呆れている」
音羽は、じっと中から見下ろしている。
「なぁ・・・」
邪神の顔は、もはや、晴の面影を失いつつあった。
「人間のくせに、始末が悪い!」
「え?人間て?」
人間ではないの?
颯太が、邪神の顔を見上げた瞬間、三冬と名乗った少女が、両手の釜を振り下ろしてきた。
「ほら!」
払いながら、邪神が言う。
「化け物より、始末が悪い!人間だよ。何だと思った?」
「寺が無くなったから・・・・闇の奴らかと」
颯太は、構わず、襲ってくる少女の鎌を交わしながら、叫ぶ。
「寺が押さえてきた闇の者達が、出てきたのかと」
「なら!想定内だが、そんな簡単なもんじゃない」
怒りが、頂点に達したのか、邪神の姿は、人間の器を超えた物になっていった。
「まさか、お前が、人間に襲われるとはな!」
「僕だって!」
長い尻尾を持つ姿に変わっていた颯太が、声をあげる。
「僕だって、驚いている」
それは、そうだ。
今まで、霊を払っていた、人間の颯太が、今は、化け物となり、人間に追われる。
「何の因縁だと思う?」
邪神は、楽しそうだ。
「この寺で、一体、何があったのか」
音羽が、笑うと、空気が振動する。
「私は、颯太は、人間だったと信じている」
「だったら、何で?」
颯太の長い尻尾は、幾つもに別れ、少女の鎌を、地面に叩きつける。
「ほぉ・・・結構、便利じゃん」
「そういう事で、便利とは、思わない」
側から見ると、狐の化け物が、人間に襲われている。
そんな構図だった。
「どうも、この人間が、何か知っているようだな」
邪神は、長い人差し指を立てた。
「話を聞かせてくれないか?」
邪神が、手招くと少女の体は、前方に引っ張られる。
「お前は、私達の件に関わるな!」
「もちろん、そのつもりだったんだよ」
だけど。
人間が好き勝手するのは、見ていられないんだよ。
邪神は、少女の肩を押さえつけていた。




