関わらずには、いられない邪神のため息。
ため息が出る。
「全く、面倒臭い」
邪神のため息が止まらない。
「だいたい・・・一度は、捨てた故郷に戻る奴の気がしれない」
「故郷は、故郷だろう?」
晴は、反論する。
「颯太は、親がいなかったんだ。育ててくれた山寺が、故郷であり、親なんだ。心配して、来るのが当たり前だろう」
「捨てたんだろう?今の生活があるのに、振り返る事はない」
「だいたい・・・・問題は、人間の姿に戻れなくなった事だろう」
晴は、イライラして言い返す。
同じ身体を共有しているのに、全く意見が合わない。
「もう!いい加減にして」
一人で、言い合う晴と邪神に、最も、イラついたのは、音羽だった。
「無理して、ついて来る事なかった」
「別に、今から、帰ってもいいんだが」
今度は、音羽に絡みつく邪神。
「あの・・・帰りますから、この金鎖外してもらえませんかね」
邪神は、音羽に付けられた金鎖を引っ張りながら、言った。
「全く、何で、俺が・・・」
「す・・・すみません」
音羽と邪神のやり取りを後ろで、聞いていた颯太が声を上げた。
「まさか、俺。こんな事になるとは・・」
何とか、人の形を保っているが、まだ、不安定で、長い尻尾が幾つも、飛び出ていた。
「あ・・・嫌・・」
邪神は、車のハンドルを握りながら、どう答えたら、いいのか、詰まっていた。
「そう・・・素直に言われると、俺としても、困る訳で」
「いいから、ちゃんと、ハンドル握れ。後ろ向くな」
顔半分の腫が、言う。
バスを乗り継いて、山を越える訳だったが、颯太の姿が、人の目に晒されるのは、危険との事で、どこからか、邪神が、車を調達してきた。
「たまには、役に立つのね」
「ばか言え。お前の口に入りたくないだけだ」
「ふん」
「さっきから、変な気配がしないか?」
山寺の跡地、近くなると、木々の焦げた匂いのほかに、生臭い匂いが漂っていた。
胸をつく、嫌な匂い。
「邪神は、臭わないのか?」
晴は、邪神の鼻を引っ張る。
「全く、いい臭いでは、ないか」
「やっぱり・・・お前は、おかしい。音羽。どうだ?」
「臭い?・・・というより、これは気配では?」
車の前に、突然、飛び込んできた姿があった。




