憎悪
封雲は、突然、現れた邪神に、颯太を連れ去られて、呆然と空を見上げていた。
「あれが・・・」
「邪神。」
砂羽は、颯太と一緒に見送りながら、呟くと鞘に剣を納めた。
「気まぐれな神と、人間は言ったな」
神と言う文字を使いながらも、神ではない。邪な奴。腹に何かを抱えている。信じるに値しない。
彼と逢った人は、必ず、口にしている。
どうして、邪神があの家に、代々、現れているのか、封雲は、わからなかった。
「代々、あそこの長男に乗り移るらしい。乗り移られた長男は、短命で、子供ができるとすぐ死ぬ」
同じ寺の仲間に教えられた。
何故、その家なのか、興味があった。
「婆さんがいる。年齢は、わからない。正気なのか、痴呆なのか。誰も、相手にできない」
「婆さんぐらいで、ビクビクしているのか?」
封雲は、言った。
「ただの年寄りに見えるが」
「お前も、わからない奴だな」
友人は、笑った。
「見えないのか?その婆さんは、守人だよ」
「守人?」
「あの家を守っているのさ。蔵があっただろう?」
「あぁ、確かに」
「蔵を守っているんだ」
「蔵?」
「そうさ。誰も、わからない。勿論、俺達の山寺と同じ」
「蔵に何があるのか、知りたくないか?」
「知りたいさ。今まで、何人も、あの家に侵入した者がいた」
「・・・で、何があった?」
「誰も、帰ってこなかった」
「誰も?」
「そうさ。何かある・・・あの蔵も、邪神も」
「邪神が、乗り移るのであれば、その元の体の人は、どうなるんだい?」
「さあな。」
友人は、封雲の肩を叩くと、
「深入りするなよ」
そう忠告し、去っていった。
「どうして、邪神が助けに来た?」
「全く、とんでもない邪魔が入った」
砂羽は、封雲に目もくれずに立ち去ろうとしていた。
「お前!」
砂羽は、言った。
「私を利用できると思うな」
封雲に向かって言った。
「あの小僧を憎んでいるのは、わかるが、私を利用した事は許せない」
「何、言っている。結局、邪神には、かなわなのだろう?」
「お前だろう。それは。あれらを敵にして、残っていけるのか?」
「あれら?」
「小僧の影には、音羽がいる。あいつは、奴につくだろう」
「音羽。どうみても、妖だろう?あいつと何があった。あなたが、殺したくなるほど」
「知りたいか?」
砂羽は、薄く笑った。
「あいつの、魂魄を微塵にしないと、気が済まぬ」
「颯太を?」
「何故、颯太が、あんな化け物になったのか、教えてやろう」
砂羽は、冷たく言い放った。




