山寺の秘密
音羽が、ぽつりぽつりと話し始めたのは、颯太から聞いていた過去とは違う話だった。
時間の経過とともに、颯太の容貌は、元に戻りつつあるが、顔に残った鱗の跡が、今までの変貌が、現実にあった事を現していた。
「私が、見つけられたんじゃない」
「話と違うな。君が封印されていたんじゃないのか」
邪神は、音羽を見下ろした。
気を失った颯太は、きっと、目覚めたときには、何が起きたのかは、忘れているだろう。
自分がそうである様に。
晴が、自分の存在に気づかない様に、颯太もそうなのかもしれない。
「確かに、村に、害をなすものとして、代々、封印されていたのは、私だった・・・が」
音羽は、続けた。
「颯太は、あの寺に預けられた。しかも、家族に」
「こいつの頭の中には、颯太には、両親がいて、父親は、海外にいるとなっているが」
邪神は、自分の頭を叩いた。
「そうよ・・・颯太には、両親がいる。だけど・・・生まれてきたのは」
「人間ではなかった?俺と同じ、請負人?」
「あなたと同じ?」
音羽は、邪神をまっすぐに見た。
「代々、あの家に生まれる事になっている」
邪神は、薄く笑った。
「俺みたいなのが、他にも、いたんだな」
「そうなのかは、わからない、けど、生まれた颯太は、人間の姿をしていなかった。驚いた、父親は、颯太を知り合いの総領に頼んで、山奥に閉じ込めた」
「颯太の・・」
邪神は、気になっていた事を思い出した。
「颯太には、母親がいた筈じゃ・・」
「殺されたって聞いたわ」
「殺された?」
血まみれの母親と、泣き叫ぶ颯太の2人きりだったと言う。
「こいつも、なかなか、やるな」
邪神が、颯太の頬をつっつくと、音羽が、眉尻を上げた。
「颯太が犯人じゃないわ」
「そう言えるか?」
「自分が、母親を害したと知ったら・・」
「どうなるかは、わからないだろう。人の心が残っているかは、わからない」
「あなたと一緒に、しないで」
音羽は、邪神を睨みつけた。
「寺の僧侶達は、何とかして、颯太を元に戻す方法を模索したの。人に戻す為に、寺に閉じ込め、時間をかけた」
「それが、誰よりも、手をかけた様に、見えたんだな。」
颯太の顔に残っていた鱗が次第に消えていく。
「人間のふりで、俺を拘束していたって、訳か」
「颯太は、人間だわ」
「制御できず、人に害をなす以上、人ではない」
「あなたよりはね」
「お言葉ですが、俺だって、人を害した事はない。人のルールが、俺と合わないだけ」
「何ですって?」
邪神は、興奮する音羽の頭を優しく撫でた。
「問題は・・・どうして、お前さんの姉さんが、この坊主を敵視しているかって事だな。聞かせてくれないか?君に何があったのか」




