邪を抑える者は、邪なのか
「恐ろしい者?ある意味、そうだが」
砂羽は、そう言った。
「そういうお前は、何者?」
白い羽を持ち、光る玉を持つ、男に砂羽は、言った。
「ふうん。私を知らないのか?」
男は、背中の羽をゆっくりと動かした。
風に、揺られ、羽は、白から灰色と、色が変わっていく。
地に降り立った時は、天から使いが降りたのかと思ったが、目の前にいるのは、
いかにも、険しい顔をした銀色の髪を持つ、オッドアイの男だった。
「名を聞いてはならない」
行く末を案じていた風雲が、叫ぶ。
「颯太が、恐ろしい?そんな訳あるか。お前の方が恐ろしい」
「私が恐ろしい?」
邪神は、笑った。
「お前達の方が、よほど、恐ろしい。互いに殺し合い、騙しあう。それどころか、相手が消えても、呪う恐ろしさよ」
「それは、誰の事を言っているのか?」
封雲が、問うと。砂羽は、薄く笑った。
「それは、私の事かい?それとも」
砂羽は、腕を大きく開く。
手首を軽く振ると、宙から、また、新たな剣が現れる。
「こいつの事かい?」
そう言いながら、倒れている颯太に、めがけて、剣を振り落とす。
「やばい!」
風雲は、札を投げつけ、剣を弾くが、砂羽の動きの方が早かった。
更に、撃ち落とそうとする。
「あぁあ・・・・キリがない」
邪神は、手にしていた光る玉を宙に放り投げた。
「やりすぎなんだよ。降りてこい!」
宙の中で、弾けた玉が、粉々に砕けて、降ってくる。
「なんだ?」
それぞれが、自分の顔を覆い、降り注ぐ破片から、顔を守ろうとする。
「待て!」
視界が悪いのに、剣を振り回そうとする。
「どこだ!」
それぞれが、視界を奪われ、動きが止まった。
「お姉さん、また、会おうね」
邪神は、そう言うと、颯太の体を抱え上げ、風雲に一瞥をくれると、地を蹴り、宙へと飛び立って行った。
「結局、颯太を助けるのか」
封雲は、砂羽を尻目に、呟いた。
「師匠達が、颯太に渡した数珠は、颯太を押さえつける物だったのか・・」
颯太と一緒にいたあの寺で、時折、不可解な事が起きた。
「山の怪」
人は、そう言っていた。
生き物や人間が傷つけられる事が続いていた。
命を断つまでは、手を下していないが、何者かが、行った事は、明らかだ。
山に獣がいる。
そんな噂が流れた。
被害者が出る頃と同時に、颯太が、血まみれで、帰ってくる事があった。
誰もが、颯太も、襲われたと思っていた。
夜中に、起きた風雲が、見たのは、傷口を舐めている大きな獣だった。
「師匠!」
怖くなり、封雲は、師匠達のいる部屋に飛び込んだ。
「また・・・ダメだったのか」
師匠は、酷くがっかりしていた。
あれは・・・・。
颯太が、犯人だったのか?
あの数珠が、颯太を落ち着かせていたとしたら、とんでもない事をした。
颯太は・・・何者なのか。
そして、あの邪神は。颯太の味方なのか?




