君に問う。あの日の事は、忘れたのか。
空に響いた声は、聞き覚えのある声だった。
「止めて!」
飛び込んできたのは、紛れもなく音羽だった。
「音羽?どうして?」
どうやって、逃げ出した?と砂羽の顔は聞いていた。
「姉さん、止めて」
「何故?止める?こいつを知っているのか?」
目の前に居る化け物は、人間の姿をしていない。
「知り合いなのか?」
砂羽は、それが誰なのか?見当がつかなかった。
「いや・・・まさか。もしかして」
その様子を見て、封雲は、自問自答していた。
「そこにいたのは・・・」
颯太だ。
封雲は、息を呑んだ。
鳥の羽毛に、囲まれた中に、人間の顔らしき姿が見える。
だが、その妖に理性を見つける事はできなかった。
太く伸びた両腕で、砂羽の剣を引きちぎると、耳まで、避けた口からは、耳を引き裂く声をあげていた。
「いや・・・ちょっと、待て」
封雲は、落ち着こうと、呼吸を整える。
「音羽。まさか・・」
ようやく、状況を察した砂羽が、目の前にいる妖に目を向けていた。
「人間じゃないのか?」
空から、降りてきた音羽が、その妖の前に立っていた。
「人間だよ。私も、姉さんも・・・元は、人間だった」
「音羽。お前は、こいつのせいで、長い間、苦しまされ、彷徨っていたんじゃ・・」
「もう、そんな事は、どうでもいい」
目の前の妖は、颯太なんだ。
封雲は、現実を受け入れられないで、いた。
「どうして?颯太が?」
「あなたが・・・・何かしたから」
気が狂った様に、叫ぶ妖の腕を確認する。
「ない・・・ない。数珠をどうしたのよ?」
颯太と思われる妖の腕に、数珠は、見当たらない。
「あれがないと!あれが、颯太を留めていてくれたのに」
「あれって?」
つまらない嫉妬だった。
師匠達が、颯太に渡していたのは、神器などではなく、颯太を抑え込む為の、数珠だったのだ。
「そう・・・だったのか」
封雲は、項垂れた。
あの数珠は、とうに、散らばり、四方に散っていた。
「どうする?どうしたらいい?」
鬼気迫る顔の音羽に、封雲は、縋りついた。
「元に、戻せないか?」
「姉さん」
音羽は、視線を砂羽に向けた。
「助ける気はないね」
この状況でも、砂羽は、何とか、この妖を倒そうと、地面に落ちている、ちぎれた剣を拾い上げた。
「こいつが、全ての災いの原因なんだろう?」
「颯太は、違う」
「違う訳ない。お前が、側にいるのが、証拠だ」
追う砂羽と、庇う音羽。
だが、明らかに妖の力が、上をいっていた。
理性のない妖と化した颯太が、2人に襲いかかっていった。
「颯太!」
止めてくれ!
そう思った時に、同じ翼を持つ影が降りてきた。




