深い怨念と一途さ
邪神、晴の前には、幼い少女が立っていた。
まだ、あどけない少女が晴の金鎖を握り締め、地に膝を突き、泣き崩れていた。
「颯太を助けて」
「代わりに何をくれる?」
「代わりに・・」
音羽は、眉間に皺を寄せた。
「は・・」
晴は、肩をすくめた。
「何もないか。そうだよな。もう、この世とは、関係のない存在だものな」
「それは・・」
「妖や神仏の類かと思っていたが・・」
邪神の両手が怪しく揺れる。
「とんだ、霊だよな」
「・・・」
音羽は、言葉を失っていた。
「この辺、一体を炎が覆った事件があった。騙された男の家に火をつけて、大火事になった事件があった。その後、女は、火炙りの刑になった。」
音羽の姿が揺れている。
「怨霊となった女の執念は、凄まじく、この辺りを恐怖に陥れたらしいな。沈める為に、神仏として崇める事になった・・・と聞く」
「誰に聞いた?」
「今・・・お前に」
邪神は、金鎖を指差した。
「意外だな・・・。意外すぎる。颯太は、何者なんだ?お前も、わからないんだろう?」
「もういい。お前には、頼まない」
音羽の姿が、次第に、元に戻りつつあった。
「お前には、頼らない」
「おいおい。まだ、力が戻ってないだろう?敵う相手かよ」
「お前に頼むより、まし」
「はぁ・・・じゃぁ、見せてもらおうか」
晴は、楽しそうに笑う。
「俺の力を借りたいなら、こいつを外すんだな」
「ただの怨霊に仕掛けられた金鎖を外す事もできないんだな」
音羽は、舌打ちした。
「結局、男は、当てにならない」
「お前に言われるとはな」
晴は、バカにしたように、両手を上げた。
「見せてくれよ。怨霊として、封印されるに至った霊の力を」
砂羽と音羽が、姉妹と言うのは、わかった。あの砂羽は、まだ、この世に存在している。存在しながらも、霊となった妹を守るのは、何故なのか。
晴は、颯太と音羽の関係が、気になった。
「久しぶりに、楽しもうか」
颯太が、どうなろうが、関係ない。
暫くぶりに、楽しい喧嘩が、見られそうだ。
音羽が、颯太を追って、姿を消したのを追って、飛び立とうとした時、激しい眩暈に襲われ、膝をついてしまった。
「えぇい。俺。しっかりしろ」
声を掛けるが、体が思うように動かない。
「なんだ・・・これ?」
思うように動かない体に焦る邪神。
「待てよ・・・待て」
激しい頭痛に襲われ、右手で、顔を覆う。
「出てくるなよ・・」
邪神が、右手で、顔を覆うが、左手が、それを払う。
「くそ・・・出てきたか・・」
舌打ちする。
「やっぱり・・・か」
声のトーンが少しだけ、和らぐ。
そう、
出てきたのは、晴だった。
「そんな事があったのか・・・」
半分の邪神と半分の晴。
音羽を追いかけ、空に立つ。




