神なく鬼の住む里で、僕らは、育った。
封雲と僕が、晴先生を迎えに戻った時。
その家の門は、開いていた。
「遅かったな」
迎えたのは、晴先生のお婆さんだった。
「お前達が、この家に戻したから、また、連れて行かれたよ」
僕達が、悪い事をしたかの様に、お婆さんは、言った。
「まるで、僕らが悪い事をしたみたいでないか」
「していないと言えるのかい?」
認知症があるとは、聞いていたが、この婆さんは、音羽によく似ている。
婆さんに喰ってかかられた封雲は、不満だった。
「晴は、邪神なんだろう?庇う理由は、あるのかい?」
失礼な発言に、婆さんの顔色が変わった。
「そう言うお前さん達は、何だい?」
手元にあった箒を振りかざす。
「やめろよ。封雲!」
封雲の手を引くが、口喧嘩が、ヒートアップしていく。
「前達が、来たのは、神無鬼有の里だろう。何もない里。大きな星の降った里には、紙屑の命すら育たない」
「待って!どうして、僕らの里の名前を・・」
僕が、預けられたのは、寺だったとしか、他人に言っていない。地元の人達が、陰で、神無鬼有と言っていたが、それは、この辺りの人は、誰も知らないはず。
「邪神が育った家だ、関係ないとは、言えない」
封雲は、婆さんの握る箒を叩き落とす。
「認知症なんて、言っているけど、違うな。婆さん」
カーっとくると、封雲は、手に負えない。
僕を庇って、何人かの先輩を怪我させた事もある。
「相手は、年寄りだよ。封雲」
除霊師とは言っても、封雲は、生身の人間にも容赦ない。
禁呪を使用し、酷い目に遭わせる可能性もある。
そうだ。
封雲は、見境がない。
僕が、今まで、距離をとっていた理由だ。
音羽が、僕を守っていた。
「こんな年寄りを相手にしてもな」
封雲は、蔑んだ顔をした。
こんな、封雲を見るのは、嫌な気分だった。
「やめろよ。先生のお婆さんだ」
僕らの先生だ。
最近、いろんな事があって、学校で、先生と逢う事はなかったけど、人間性は、熱い人だった。
「いいか・・・」
封雲の態度に、お婆さんは、言った。
「生きて帰れると思うな。今まで、逢った事のない妖が待っているだろう」
僕らは、顔を見合わせた。
「寺が無くなったのは・・・やはり」
「その里の名前が、どうして、そうなのか、お前達なら、わかるだろう」
そうだ。
そこは、音羽と初めて出会った場所もある。
神はいない。鬼のみ。
そこは、僕ら、捨てられた子供達が、住んでいた寺があった。




