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自分に流れる穢れた血

時折、自分がわからなくなる。

体の中が熱くなり、背中の毛が逆立つんだ。

手も足も感覚が無くなり、宙を掻く

何が起きているのかは、わからない。

自分の体を這いずり回る虫達。

「どこにいる?」

頭の中に声が響く。

「隠れても、無駄だからな」

「やめて!やめて!」

頭を抱える。

「どこに隠れてイヤがる」

「だめだ」

砂の上を逃げ回るが、伸びてきた黒い爪に、つままれる。

「離して」

離してと、何度、叫んだか。

その声は、どこからきたのか?

考えた時、その声の向こうに立っている女性の姿が見えた。

「音羽」

音羽?

その声は、あの高校生だった。颯太と言った筈。

呼ばれて振り向いたのは、赤い振袖の女の幽霊だった。

「音羽」

聞いた事のある音の響きだった。

「晴や晴・・」

ハッとして、目が覚めた。

枕元には、婆さんが、座っていた。

「手伝って、おやり」

「手伝うって?」

夢だったのか、砂の上を逃げ回る自分。

小さく無抵抗だった。

足の裏に、焼けついた砂の感覚が残っている。

「お役目じゃのう」

「お役目って」

「とんだ神様を預かったもんだ」

「婆さん。神様って」

「降ろした者が責任取らないとな」

婆さんは、小さな包みを渡してきた。

「困ったら、開けなさい」

「困ったらって、今が、困っているよ。婆さん」

「先生は、生徒が困っていたら、行くもんじゃ。はいはい」

「僕は、やっと、家に帰ってきたのに、また、何処かに行くのかい?」

「忘れ物を取りに来ただけだろうって」

婆さんは、小さな包みを僕に渡した。

「いいか、困った時だけだぞ」

あまりにも、厳しい顔で、言うので、晴は、頷く事しかできなかった。

「今、迎えがくるぞ」

「迎えって・・」

晴が呟くと、突然、開いた窓から、黒く長い爪を持つ手が飛び込んできた。

「無事で、帰ってくる事を祈るよ」

家族だったら、突然、現れた不快な手に、驚くはずだ。

だが、婆さんは、動じる訳でなく、口元に不適な笑いを浮かべ、掴み掛かられる晴の姿を見ていた。

まるで、こうなる事を望んでいるかのように。

そして、晴は、飛び込んできた黒い手に、飲み込まれていった。

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