名前を呼べば、現れる。真の言葉
夜。
闇は、ベッタリと颯太に絡みつく。
今まで、一人で、闘うなんて、考えた事なかったから、今は、闇が怖い。
「こんなに、僕って、臆病だった?」
そう感じずにいられない。
右手に巻かれた数珠に唇を寄せる。
この数珠は、あの寺で、もらった物。
忘れもしない、自分が放り込まれた寺で、雄一、面倒を見てくれた。若い僧侶
何人か、居た中で、一番、若いから、下っ端と思って、タメ口を聞いていた。
「お前は、これから先、大変な目に合うな・・」
僧侶、凛言は、言った。
「いろんな拾い物をするようだ」
「拾い物?」
その時、既に、音羽を拾っていたので、言い当てられて、ドキンとした。
「お前を取って喰うような拾い物だ」
「僕は、食べられるの?」
「そうだな」
凛言は、そう言うと、颯太に自分の、腕から外した数珠を、手渡しした。
「いらないよ」
何も知らない颯太は、言った。
一番、下っ端の僧侶の数珠なんて。
「何言ってんだ」
後で、使用人が言った。
「あの方が、一番、偉いんだぞ」
「え?」
その日、颯太は、寺を降りた。
久しぶりに、帰国した父親が、寄宿舎付きの学校に、颯太を放り込む為だった。
「あの時も・・・」
自分は、一人だった。
闇が、どこまでも、広がり、自分は、一人だった。
「お前が、あの寺にいた奴か?」
寄宿舎で、待ち受けていたのは、イジメだった。
そのイジメから、救ってくれたのも、音羽で。
そして、もう一人、自分を助けてくれた人が居た。
「封雲。」
名前を口にしてみる。
ずっと、忘れていた。
いつも、颯太の背中を追いかけていた奴が、今、目の前にいる。
邪神。先生を送った帰り道、闇の中に現れたのは、颯太の幼馴染の封雲。
同じ除霊師を語っていた。
「と・・突然、現れるなんて、びっくりさせるなよ」
一人の闇夜は、久しぶりに、魂が、縮み上がる。
「ようやく、思い出してくれたか?」
「なんで、今頃?」
驚く颯太の周りを封雲は、キョロキョロと、辺りを見まわし、何度も、確認した。
「何だよ?どうした?」
「まさか・・・いないよな。あいつ」
「あぁ・・」
封雲は、音羽が、苦手だった。




