さあ、棺の蓋を開けろ
晴が、涙を溢した瞬間、あたり一面を光が包んでいた。
横一文字に走った光。
颯太と音羽は、一瞬、自分達の体が消し飛んだ気がした。
「始めたのは、お前達だ」
低く不気味な声が、響き渡った瞬間、2人は、颯太の寝室に戻っていた。
「音羽・・・どこだ?」
颯太は、気が付くと、寝室の床に倒れていた。
さっき、別の世界に飛び込んだ時と同じ時間だった。
あの光の中で、音羽は、消え去ってしまったのだろうか。
この世の者でない、音羽は、いつか、消える運命にある。
自分のそばに、居れるのも、僅か、かもしれない。
「ここだ・・」
そう言って、現れた音羽は、いつもと顔が異なっていた。
「どうした?」
「気にするな」
答える音羽の姿が、半分、消えかけていた。
「何が起きた?」
「起きるべきして、起きただけだ。」
音羽は、颯太を突き放した。
「いいか・・・どうして、ワシが危険を犯してまで、あいつを連れてきたのか、お前にわかる日が、絶対、来る。だから・・悲しむな」
「待って!どういう事」
音羽は、消えかけていた。
「あいつをコントロールするのだ。お前、一人では、残れない」
いつになく、音羽は、優しかった。
「よく、ここまで、育ってくれた」
「何、言ってんだ?居なくなるみたいでないか?」
颯太が、音羽に詰め寄ると、掴んだ、腕がすり抜けていった。
「嘘だろう。何が起きているんだ。元の世界に戻ったんじゃないのか」
颯太は、辺りを見回した。
いつもと変わらない光景。
そこには、邪神から、元に戻った晴が、壁に寄り掛かり、座っているだけだった。
「音羽。奴は、戻ったのか?」
「戻っている。いいか、わかったか?」
音羽は、そう言うと、宙の中に静かに、消えていった。
「音羽!」
颯太は、追いかけ、宙を掴みかけ、前に転んだ。
音羽は、少しずつ、宙に溶けて行くように消えてしまった。
「嘘だ」
音羽は、いつもの様に、突然、宙に現れるかもしれない。
今は、ただ、力尽きただけなのかもしれない。
何度、宙を仰いでも、音羽の現れる気配はなかった。
「帰ったか・・」
壁に寄りかかる晴の口から、邪神の声が流れてきた。
「いいか・・・棺の蓋は、開けられた」
そう言うと、晴は、ゆっくりと目を開けた。




