この人、危険です。
少年の目は、真っ直ぐに僕を見つめていた。
「火をつけます」
少年の言葉に嘘はないと思った。
「待って、今、ここで火を付けたら、大変な事になるよ」
「わかっています」
大変な事を、これから、起こそうとしているのに、どこか、違和感がある。
衝動的に行動する様に見えない。冷静さがあった。
「関係のない人を巻き込まないで」
「みんな、関係なのに、巻き込まれるんです」
少年は、淡々としていた。
「僕と同じ新幹線に乗ってしまったのが、悪縁の始まりです。一つ前の駅で、降りれば、僕と出逢わなかった」
「何か、あったの?こんな事したら、家族だって困るでしょう」
「家族?」
家族と聞いて、少年の顔色が変わった。
「家族が居れば、こんな事したくなかった。僕の家族を巻き込んだ奴が、のうのうと生きている。間違っている」
少年は、今すぐにでも、火を新た放ちそうだ。
前方に上がった炎は、駆けつけた乗務員が、消火器を使って、鎮火し始まっていた。よし。
もう、少し彼を惹きつけよう。
「アレェ?」
少年は、炎の色が変わった事に気が付いた。自分が、巻いた炎が消化されかかっている事に気がつくと、乗務員に向かって、走り出そうとしていた。
「待って、待て待て」
僕は、慌てて、少年の袖を掴んだ。
「話を聞かせて」
「離せよ!」
少年は、毒気ついた。
「もう、どうなってもいいんだ。」
少年は、叫び、ペットボトルの封を開けようとする。
「何もかも、終わったんだ。巻き込まれただけなのに、僕らが、悪い事になっている」
激昂し、空いたペットボトルの中身が、ぶちまかれる。
「やめろ!」
少年が、ライターを転嫁しようとした瞬間。
「!」
僕の頭の中は、疑問だらけになった。
そうだった。
一緒に、何食わぬ顔で、寝ている。あいつがいたのだ。
「もう、着いたの?」
少年の握っていたライター事、握りつぶした奴が目覚めていた。
「だ・・・誰?」
少年は、驚いた顔で、座席の間から、顔を出した晴先生を見ていた。
「誰?って」
寝ぼけた晴先生が、前方で、ようやく鎮火した煤だらけの座席と、ザワザワと集まる乗客達の視線に気が付いた。
「何か、あったの?」
握りつぶしたライターが、抜け落ち、周りに有機溶剤の臭い匂いが、立ち込めていた。
「何かあったのって・・」
僕が、そう言った瞬間。
「くそう!」
そう叫びながら、少年が、晴先生にナイフを振り翳し、飛びかかった。




