だから、人には、教えられない
側から、見たら、付き添いの教師と高校生に見えたかもしれない。僕と晴先生は、新幹線の自由席の一番後ろ、2人掛けの席にいた。晴先生は、すっかり、疲れたらしく、窓際で、眠りについていた。
「元気か?」
時折、時間に関係なく父親から、ラインが届く。向こうは、何時だろうか。時折り、僕の事を思い出す事もあるんだ。
僕は、すっかり、いじけ易くなっていた。僕の顔を見ると、亡くなった母親の顔を思い出すのだろう。祖父母に僕を預け、海外へと逃げ出していった。
「ママは?」
他の子供達には、居る、父親や母親がいない事を、物心つく頃の僕は、不思議に思い何度も聞いて歩いたそうだ。中学校は、寮のある所を
選び、祖父母からは、離れた。珍しく、寺院が経営している中学校で、僕は、音羽と出会った。
出会った頃の音羽は、とんでもない霊だった。その音羽に、僕の能力を見出され、こうして、除霊師として、暗躍する事になったのだが。
まさかね。
これ以上の事に、巻き込まれていくなんてね。
とんでもない先生に逢ってしまったよ。
でも、先生の事は、絶対、秘密なんだ。
この事は、世の中を混乱に巻き込むんだから。
先生には、悪いけど。
僕らが、うまく、処理させてもらいます。
僕が、窓ガラスに映る晴先生の顔を眺めている時に、突然、車内の一番前の席で、悲鳴が上がった。同時に、たくさんの人が、こちらに逃げ出してくる。焦げる匂いと、黒い煙が上がるのが見えた。
「えぇ?」
僕は、思わず、立ち上がるが、こちらに向かう人の波で、よく見えない。
「何が、あったんです」
聞いても、誰も、答えてくれない。
「あ・・あの」
聞こうとした高齢の女性が、僕に気を取られ、よろめいた。
「あ!」
女性の後方から、逃げ惑う人に押され、女性が転倒する、逃げ惑う人は、
女性に構い事なく、上を跨ぎ、黒い煙から逃げ湯とする。
「ちょっと!」
僕は、女性を助け起こそうとするが、たちまち、後から来る人達に、押し倒されてしまう。
「ちょっと!止まって」
僕が、叫んでも、誰も、止まらず、次から次へと、人の波が来る。ようやく、人の波が落ち着いたと思い、女性と一緒に体を起こすと、こちらに向かって、ゆっくりと歩いてくる少年と目が合った。
「?」
少年は、薄く笑い、両手に液体の入ったボトルとライターを持っていた。その背後には、赤く燃え上がる炎が見えた。
「どけろ。退けないと、火をつけるぞ」
少年は、僕の目を真っ直ぐに見つめて、言ってきた。
僕とあまり年齢の変わらない、どこにでも、居そうな少年だった。




