囚われた邪神
その帰り道。
誰もが、振り返って僕らを見ていたと思う。
晴先生は、何があったのか、理解できない様子で、とても、静かだった。
ただ、今までと違うのは、晴先生の首に、金のネックレスが、ある事だった。
「いつ、顔を出すか、わからないからな」
音羽は、そう言うと、何か、口の中で、呟くと、金の鎖は、ネックレスへと姿を変えた。
「新幹線で帰るんだろう?」
別世界に、晴先生を、送り込んでおきながら、帰りは、新幹線で帰れと言う。
「音羽は、ただで、乗れるかもしれないけど」
僕は、携帯すら、持って来ていない晴先生のチケットも購入する羽目になった。
「ごめんな。何で、山で、遭難したのか、覚えていなくて」
それは、そうだ。
晴先生は、必死に弁解した。
「気が付いたら、遭難しかかっていてさ。お婆さんとお孫さん達に助けられた」
助けたと言う3人は、晴先生の真実の姿を見ると、震え上がっていた。
「主の顔も忘れたのか!」
耳まで、口が裂けそうな位に叫んだ音羽は、3人に
「もう少し、修行してこい」
と叫び、砂漠の世界に飛ばした。
あの世とこの世の境だ。
その入り口に、居たのがあの婆さんだ。
3人とも、小鬼だ。
使い魔だった。
「喰われなくて良かったな」
音羽が、トドメを刺した。
「新幹線に乗ったら、ビールくらい飲むんだろう?」
音羽は、何か、酒を買えとせがむ。
「あのさ・・・俺、一応、学生」
「かまわん。晴が許す」
「いやいや。ダメでしょう」
音羽の存在に慣れたのか、顔を出しかけると、舌を鳴らす。
「幽霊っては、昼間も出るなんて、思わなかった」
小鬼達の前で、音羽の存在を知って、2度、気絶した晴先生が言った。
「君には、幽霊が取り憑いていたんだな」
「大した事ないですよ。僕は」
僕は、事前に購入していたお茶を口に含んだ。
「先生ほどでは、ないんで」
「僕?」
晴先生は、おどけて見せた。
「どんだけ、馬鹿なんだか」
音羽が、宙で、舌打ちしたらしく、空気が音を立てた。
「颯太。これで、思い切り、仕事ができる筈だ。お守りができたからな」
「お守り?疫病神では?」
「お守りになるよ。お前の力には、限界があるからな」
「ただの、除霊師でしょ。それ以上の事は、引き受けないし」
「どうやら、そでもないんだぞ」
「こいつが、目を覚ました事が、何よりの証拠だ」
隣で、眠り始めた晴先生の寝顔を指して、音羽は言った。




