霊場の老婆
「砂漠の星が綺麗だ」
晴は、ハッとした。自分の声で、意識が戻る。
「ここは、どこ?砂漠ではない?」
記憶が飛んでいた。砂漠に居た筈だ。現れた鏡に中に、もう一人の自分が居た。手を差し出すと、その手は重なり、一つになった。そこで、記憶が飛ぶ。側に少女が居た。双子だ。自分の姿を見て、驚いていた。
「ここは、どこだ?」
自分が発した声に、答える者が居て、驚いた。
「ここは、霊場だよ」
「霊場?」
晴は、飛び起きた。
「どうして、最北の地に?」
どうやら、石を頭に横になっていたらしい。一面に大小の石が転がり、または、積み重なれ、寒々とした景色を醸し出していた。
「こんな所で、寝ている若者も、珍しい」
古い着物を着込んだ老婆は、言った。
「こんな所で、横になるなんて、普通は、できない」
「あの・・・」
晴は、躊躇した。
「ニンゲンですか?」
突然、初対面の人を相手に言う言葉ではない事は、わかっていた。だが晴は、自分が、思いもよらず、遠方にいる事と、目の前にいる老婆が、余りにも人間離れしていたので、確認せずにいられなかった。
「ニンゲンかと?」
老婆は、困った顔をした。
「つまり、ニンゲンに見えないから、聞くのだな」
「いや・・・あの。その。逆に僕は、ニンゲンとしか見えないくて・・・」
霊は苦手で・・・。だけら、どちらも、普通に見えるので、確認したいんです。なんて、言えない。
「イタコじゃよ。ここに来たのだから、知っているであろう」
「ニンゲン。なんですね。よかった・・・いや。。。よくない」
晴は、ブルっと、身を震わせた。
「ここって、霊がたくさんいるんですよね」
「居ると言うより、降ろすって言うのかな」
「降ろす・・・」
晴があんまり、動揺するものだから、どうして、晴がそこに居るのか、不思議に思った。
「こんな所で、寝ているなんて、度胸があるとは、思ったが、お兄ちゃん、誰かに連れてこられたんとちゃう?」
老婆は、晴が犯罪に巻き込まれ、この場所に遺棄されたと、思ったようだ。
「いえいえ・・・えっと」
晴は、焦った。家に居たら、突然、幽霊が現れ、別の世界に連れて行かれたなんて、言っても信じてもらえそうにない。
「友達と一緒に来たんですけど、置き去りにされたみたいですかっ。気分が悪くなって、倒れたみたいです」
「倒れたのかい?これから、帰るあては、あるのかい?」
「ここからは、どうやって、帰れますか?」
日は、暮れ始めており、この霊場と呼ばれる山頂が、交通の便が良いとは、思えない。誰かを呼ぶにも、早くても、夜間になりそうだ。
「あ・・あの。どうすれば?」
晴は、情けなくも、泣きそうになった。
「儂も、今、帰るところだしなぁ。みんな、引き上げてしまうから、ここは、誰も、おらんようになる」
地獄の門をモチーフにした、偽の建物だが、臆病な晴には、本物に見えて仕方がない。
「お願いです。どこか、人気おある所に連れて行ってください」
「儂が?」
老婆は、深い眉間の皺を寄せて言った。
「孫が、迎えに来るから、乗って行ったらいい」
晴は、老婆の孫の車に乗せてもらえる事になった。




