表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/104

廃寺の記憶

廃寺に着くまでの間、誰も口を聞かなかった。


何度か、音羽が、心配して、宙から出たり入ったりしていたが、


颯太も封雲も、言葉を発する事はしなかった。


もちろん、何度か、晴が自分の存在を知らせたが、


颯太の表情を見やるだけで、


口を開こうとは、しなかった。


「何を話せばいい?」


音羽が、封雲を小突いた。


「君の姉さん・・・」


砂羽の事だ。


「強いね」


姉妹で、この世を彷徨っているなんて。


音羽は、鼻で笑った。


「勝手に、私の事を心配している。迷惑なのよね」


「君は、どうして、この世にとどまっているの?」


「私?」


あいつに、復讐したいから。


そう言葉に出したかったけど、あえて飲み込んだ。


「なんだか、忘れちゃった」


「忘れる様な事でないでしょ?」


「それ位、長いって事よ。あなたは、どうして、寺に預けられたの?」


「僕?」


誰かが、自分に関心を持ってくれるのは、嬉しい。


「貧しかったから」


「今どき?」


「親が、離婚してね。母さんは、僕を捨てて、出て行った」


「ふ・・ん。だから、異常にやきもち焼くのか・・・」


「そんなに、焼いていないと思うけど」


「颯太に執着している」


「そうか?」


「ライバルというより、憎んでいる」


少し、言い過ぎかも。


音羽は、封雲の顔色を伺った。


「そう見える?」


「颯太に嫉妬している」


「そうか・・・」


「あのな?ごちゃごちゃ、聞こえてるんだよ」


運転していた邪神が声を上げる。


「そういう話は、別の所で、やってくれ」


「どう思う?邪神よ」


不意に、邪神に振ったので、車内は、異様な空気になった。


「こいつはさ・・・」


邪神の手が伸びて、封雲の頭を撫でる。


「飢えているから、敏感なんだよ」


「何が!」


封雲が、邪神の手を払う。


「颯太は、捨てられたんじゃない。託されたんだ」


「誰に?」


黙って、話を聞いていた颯太が声を上げた。


「お前の母親だよ。玉藻御前に・・・」


「託された?生きているのか?あの妖怪は」


言いかけて、封雲は、口を押さえた。


「真実は、わからない・・・ただ、俺の記憶では、そんな悪い女ではなかった・・・それは、間違いない」


「知ってるの?」


「ちょっとな・・・」


全員が、邪神の顔を見た時、車は、焼け落ちた寺門の前に、着いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ