これが...FRD...
2035年/7月/18日/金曜日。
この日はいうなれば、ゲーム業界に衝撃を与えた日だろう。
「テレビでも見るかな。おいしょっと」
「先日、LaGGの新作Rfpsゲームである、First person shooter in Real Damage
通称「FRD」のαテストが開始されました!この先行プレイには、1000人がプレイ可能とのことです。」
「いやーとうとう始まりましたねαテスト、日本のゲーマーの方々も待ち遠しかったのではないでしょうか?」
「そうですね。しかし、日本の枠は30名程度と聞きましたが、これはどういうことなのでしょうか?」
「それはですね、世界各国のうち、20か国ほどこのαテストに参加して、通信やらなんやらのテストをしてβテストに移るので、全世界からテスターを募らなければいけないのですよ。なので、日本の枠はたったの30人しかなかったんですよね~」
「なるほど、そういうことだったのですね、ありがとうございます。それではお時間になりましたので、今回はここまで。また来週、お会いしましょう、さようなら~」
「はーん、なるほどね~。30人中の1人が俺ってわけだ」
Rfps(リアルfps)
それは、LaGG(lol and gan game)が作ったゲームの総称で、そこの会社が作った機械(VR)を頭につけると、プレイヤーの脳波やらなんやらをゲームに同期させて、それで自分の意識とか感覚がゲームの世界に行けるっていう代物らしい。ま、それも2年ぐらい前に初期モデルが出ているから、結構Rfpsはやりこんでる。
しかし、今回発表された FRDはなんと...痛覚が今までの比じゃないらしい。そら、RDって言ってるくらいだ、現実と大差ない痛覚が味わえるんじゃないか?
「ふあぁ~あ、眠すぎてやばいわ~」
「おいおい程村さんや、Rfpsはまりすぎだろ~?どーせ深夜までやってたんだろ、ま~た」
「HAHAHA、よくわかったな!流石は我が親友よ!おみごと!」
「...眠気覚ましか?声上げないと起きてられないのかよっ、この親友さんはよ~」
「あはは~、ちょっとうるさかった?すまねっ」
「まぁいつものことだし、別にいいけどよ~」
「へへっ、すまねえぜアニキ」
「お前キャラありすぎだろ!変化のし過ぎで風起こるわ!」
「...ごめん、何言ってんのかよくわからなーーい」
「ぬちころすぞ」
「おうっとこうれはふぉんきのむぇえ、くぉれはやぶぁいですよぉお??」
「あーはいはい、ゲームで人間やめた人はすごいなぁ」
「ひでーなお前、泣くぞ」
「勝手に泣いてろ、ほら、学校ついたぞ」
「へい、んじゃまた」
こうして俺は親友と別れた後、教室に向かった。
ガララララ
「おっは」
「おっは」
「はーやれやれ、土日にやってたから疲れたぜ~。あのゲームリアルすぎるからこっちでも疲れちまうよ~」
「いやいや、お前簡単に言うけど、どうやってあのゲーム手に入れたんだよ!?日本じゃ30しか売られてないんだろ!?」
「まぁな、でも簡単な話よ?11時59分59秒を確認して~、ストアの更新して~、購入をポチって~、購入確認をして~、買う。ただそれだけさっ」
「...やっぱガチ勢は違うな。っておい!それだけで行けるわけないだろ!お前みたいなやつはゴロゴロいるだろ!それでなんで買えたんだよ!実際俺もその方法してみたけど買えなかったわ!」
「それは簡単な話さ、タイピング速度が遅いだけだよ、HAHAHA」
「おうおうおう言ってくれるねぇ、じゃあお前購入にどれくらいの時間がかかったんだよ!」
段々と気迫を強めていってくる浅倉に対して、俺は高らかにこう告げた。
「14秒以下」
...どやぁ
「...え?あのめんどい工程を14秒?え?嘘」
「いや正確には嘘」
「だ、だよな~。ビビらせるんじゃないぜ~?」
「更新にまず2秒。購入を押したときにネットの通信で1秒、購入確認でも2秒、購入が完了しましたの画面が出るまで5秒だから、俺が実際にタイピングしたのは4秒。まっ、ストアバンクに先に金入れてたから、そこは計算しないで考えるとだけどな」
(ってのは嘘で、マクロ組んで全部自動でやったから実際は5秒ぐらいなんだよな~。じゃなきゃあのゲームは手に入れられないっての)
「...縁切るわ」
「なんでっ!?許してっ」
「...はぁ、許すからその土下座やめろ」
「でへへ~」
俺はそんなこんなで、俺の求めるゲームを手に入れた。
キーンコーンカーンコーンン
「おーい程村ー、一緒に帰ろうぜ~」
「へいへい~」
下駄箱に向かって、靴を履き替えた。
「そういや程村、お前アレ手に入れたんだってな?」
「おう、手に入れてやったぜ」
「お前んところのクラスのやつが色々言ってたけど、実際今回目玉の痛覚ってどうなのよ?」
「ぬふふ、それはだなぁ...」
~~~2日前~~~
「っしゃー!やるぞー!」
俺は買ったばっかの FRDを早速 DLして、起動した。今の時間は土曜の0時43分。一人でかなり興奮してた。
「お、終わったか」
DL中に触ってたスマホをオフテゥンにぶん投げると、俺はすぐにゲームを始めた。
「FRD、Link start」
こういうと、脳波の...バックアップ? が行われる。そして気づいたときには...
「...うおぉぉぉぉぉ!?」
こちらの世界に来ている。
「とりあえず、すげー世界観だなぁ...」
思わず声に出してしまうほどの景色が、そこに広がってた。
周りには鉄格子、鉄線、地雷、爆薬、塹壕に廃戦車。明らかに今ままでのRfpsとは一味違うな。
そして何より、リスポーン地点の奥のほうにドーンとあるレンガ造りの廃墟らしきものが、まさに戦いの傷跡って感じでいい。あと匂いも、火薬臭が良き良き。
「これが...FRD...」
改めてそのすごさを理解したら、少し冷静に戻った。
「ん?no user?」
俺の頭上にはそれと、緑色の枠に入ったsettingを見つけた。
「アーそっか、まだこのゲームのプレイヤーを作ってないからか。なるほど」
手元にコントロールパネルを出すと、セッティングをタップして、ユーザー登録の画面に進んだ。
「...ん?なんだこれ」
ユーザー設定専用の空間に行くと、色々と決められることがあるんだが...
「じぇんだーリバース?」
空間の隅っこに、「Gender reverse」の文字があった。
「ナニコレ、日本語訳されてないけど、なに?性別を変えるというのかね?」
今までのRfpsじゃ到底考えられなかった仕様、何なんだこのゲームは...
「うーん...してみる?いやでもなぁ...実例が欲しいな...」
そう思った俺は、一回ユーザー設定は置いといて、とりあえずリス地点に戻った。
「ふいー、ユーザーがないから幽霊状態だけど、探索はできるもんね~」
さぁどこを探索しようかと思った瞬間、とあることに気づく。
「...あえ?プレイヤーおらん?あえ?」
そう、ほかのプレイヤーがいないったらありゃしない。どういうこった?
「おーい、誰かいませんかー?」
まさかユーザー設定してからじゃないとまともにできないとか?それなら一回リアルに戻って情報を...
「どうも~」
「うえっ!?」
真後ろから声が聞こえてきたんだが...
「あえ?」
何もいない!嘘だろこのゲーム幽霊でもいんのかよ!?
そう考えてしまうほどに何もない。頭がパニックだよ!?
「あの、大丈夫ですか?姿は見えませんけど、驚いちゃいました?」
「んん、ええ、あえ、え?」
「あはは、その様子だとかなり驚かれちゃったようですね、ごめんなさい」
「あっいや、謝らなくてええですよ、あはい」
とりあえず日本人らしい、見えないってことは、こいつもユーザー設定してないのか?
「そうですか...あの、もしかしてまだユーザー設定されていませんか?」
「あっはい、まだしてないですね...そちらもですか?」
「そうなんですよ。でも、どうやってやればいいのかわからなくて...」
「あ、あ~...それは頭上のセッティングをタップすれば行けますよ。もしかして...」
「あ、ほんとだ!ありがとうございます!それでは失礼します!」
「え、あちょぅとまっ...」
ぷしゅんと音を上げて、その日本人は消えた?って言いのかはわからんが、消えた。
「何だったんだよ...マジで...」
まだ落ち着かない自分がいたが、とりあえずゲーム終了のボタンに手を伸ばした。
「ん...っは、リアルか...」
現実世界に安堵しつつ、とりあえず情報を集めることにする。時計を見たら、1時54分だった。
「...はぁぁああぁぁあぁあぁぁああ」
(まったく情報がねえじゃねえか、何だってんだよもー)
現在時刻は2時38分、あれから40分ぐらい検索をかけたが、何も情報はない。掲示板やら外国のゲーム情報出してるところとかに行っても、何も情報はない。あるのは発売前の公式が出した情報だけ...
「あぁんもう、こうなったら一回寝るか?明日...ってか、今日の朝にまたログインすりゃええか」
そう思ったらすぐに眠気が襲ってきたので、素直に寝た。
「ふぁー、よく寝た」
時間は朝の8時23分、約六時間睡眠だが私は元気です。
「さて、情報はなんか出てるかな~」
枕元に置いといたスマホでFRDと調べた。
「...ん?」
あれ?おかしいな。俺の目には公式以外の情報がないように見えるが...
「まてまてまてまて、おかしいだろ!もっとよく探せばあるはず...」
そう思っていくら探しても...ない。どゆこった。
「まーまてまて、落ち着け。掲示板にだったらあるだろ、ははは」
そう望み薄の希望を抱きつつ、記事版の検索にFRDと打つ。打ったんだよ、確かに。
「...ない」
何もない。っていうか、「FRDの事前情報まとめました!」とかはあるんだけど、実際にゲームを買ってプレイした人がいない?
「嘘だろ、マジかよ...」
こうなったら、俺が掲示板に書き込むしかないか...?使ったことないけど
「いや、待てよ?誰か情報が少なすぎるってことについて言及してないか...?」
そう思った俺は、検索にこう入れた。
「FRD プレイ情報 少ない」
ENTER
「うおっ」
やっぱりそうだ、色々な人が言及してる...「FRDのプレイ映像がない理由」「FRDの動画とかプレイ情報がありません!」ってな感じで、色々なタイトルでブログやらなんやらに投稿してる人が多いようだ...
「やっぱやるしかないか、掲示板に書き込んどこ」
あまりにも情報がないのもゲーマーさん達がかわいそうだし、これがきっかけでFRDプレイヤーも湧き出てくるかもしれないから、俺はとりあえず書き込むだけ書き込むことにした。
「んと、タイトルを決めないとな...」
使ったことがない自分だが、何となくで進めていく。
「FRD持ってる純正日本人です、ゲームで見たもの書いていきます...こんな感じか?日本人って言ったら少なくても日本の人は見てくれるやろ」
そう思ってこのタイトルにした。誰も見てくれなければ、それでいい。
「まーいいか、作成!ポチっ!」
掲示板に部屋が建てられたとともに、俺はタイトル通り、見たものと体験したものを書いていく。
「とりあえずリス地点で見たものを書いていく、リス地点はなんか周りに鉄格子やら爆薬やらがあって~、奥のほうにレンガ造りの廃墟が...」
そうして訳10分、あの謎の日本人についても書き終えたぐらいだった。
「ご飯できたぞ~」
「うい~、3分後行く~」
「はいよ~、早めにな~」
「...今日はお父さんの飯か、こりゃ期待できるな」
話はずれるが、俺の父はかなり料理がうまい、今日は何だろうな~、楽しみや。
「ってこんな期待してる場合じゃないんだよ俺!早く掲示板に書き込まなければ...」
そう思ったが、いまさら何を書けばいいというのか。人はいないし、書きたいことは書いた。
「あ...書くことないか...」
そう思ったが、ここはネット民、あれを書かなければ。
「...飯落ちするので、20分ぐらいで帰ってきます」
これはもはや定番だよね~と、一人で感じていながら、俺はキッチンへ向かった。
「ふい~、うまかった~」
お父さん特製チャーハンの味に浸りながら、俺はさっき書いた掲示板の反応を楽しみにしてた。
「誰か人が来てればいいけどな~、ちょっとでも書き込んでいてくれればええや~」
そう思って画面を見ると...
「おぉ!マジか!」
128まで伸びてやがる!俺がいない間にこんな伸びるもんか...?
そう思いつつ、どんな書き込みがされているか見ていく
「実際のゲームプレイはまだしてないの?」
「性別が変わるとかナイナイ」
「そもそもとしてでっち上げの可能性ないか?情報出してるのこの人と公式だけっぽいから、いくらでも噓つけるぞこいつ。公式もゲーム画面全く出してくれないし」
「つうかこいつよくFRD買えたな、すげえわ」
(うーん、やっぱ否定的な書き込みが多いかな、嘘ついてる可能性か、なるほどね~)
こういう掲示板民は人をけなすことが好きな人がいるからな、まーしゃーなし。ってかゲーム民もそういう人いるよね。
「ん?」
一つの書き込みに目が留まる
「とりあえず主でてこいや、飯落ちとかほざいてんじゃねえぞ」
「うわぁ怖い人や」
思わず言ってしまったが、確かに 主である俺がでなければいけないか...質問も来てるし...だがしかし
「めんどいからいいや」
そう、こいつら全員相手にしてるとかなりの面倒、これならとりあえずゲームにログインしてもっと情報集めたほうがええわ!
「よし、こうなったら一か八かでユーザー作るか!」
そう思い、俺はFRDの世界へ行った。
「ん...お、来たか」
今日の深夜見た光景、やっぱり RS(リスポーン地点)の周りは爆薬やらなんやらが置いてあって臨場感あるね~。
「とりあえず、セッティングからユーザー設定部屋に行ってと...」
前回と同じく、セッティング部屋についた。
「ん~、前回もそうだったけど...Gender reverseか、どうしましょ」
正直言って、女になるメリットがない。実際俺は男だから、男の体のほうが扱いやすいんじゃないか...?
「んーでも性別が変わるとかありえねーって言ってたやつもいるし、なんか女になってみたいってのもあるし、取り合えず reverse(逆)にしとくよね~」
うーん、やっぱ好奇心って抑えられないよね。別にリアルでもないし、ゲームの中だけやったら大丈夫だと思い、俺はゲーム内性別を女にした。
「んじゃ、キャラ作っていきますかね~」
そういうと、俺は夢中で作り上げていった。
「,,,あとは~、やっぱショートヘアーのほうが戦いやすいかな?髪色はまあ黒でいいかな?ん~でもな~...」
俺はかなり苦戦していた。女になれるというのなら、それこそ飛び切りかわいい子を作りたいというものだ。これが男の宿命というやつか...
「んまぁ、これなら...いやでもなぁ...」
何をそんなに迷っているかって?身長160cmの日本でいうJKくらいの子の髪の毛やぞ、そら慎重になりますわ!
といっても、体格だけ言うとそんなJKっぽさはないんだよね、どっちかって言うとダウナーか?んまぁそれももっかい作り直せばいいんだけどさ。
「ん~...まあせっかくだし...作り直すか?なんか茶髪の the JK(ザ・女子高生)になりたくなってきたし」
我ながらかなりキツイ、何ならキモイ発言をしつつ、一からやり直すことにした。
「んまぁ、掲示板民やら日本のゲーマーやらオタクやらだったら、ぜってぇthe JKなほうが見ごたえあるよね~、JKが銃持って戦うんだよ!?ええやん~好きやわ~」
かなりのゲーマーでありオタクである俺は、即決でそう決めた。うん、キモイね。
「あーでも、どうせ1からやるなら、掲示板にこういうキャラ作ります~って言ってから作るか」
主であったことを思い出したので、さすがにこれは書かなければと思い、キャラ作成を途中で放棄してログアウトした。
「んふ~、まだゲーム本編進められてないって言ったら怒るかな~?」
そう考えつつも、とりあえず時計を確認、俺の癖だな。
「おっふマジか、もう2時やんオワタ」
こりゃ下でお父さんが飯待ちしてると思って、速攻でキッチンへ向かった。
「すまん父上!今行くぞ~!」
「おせーよばかやろー、もう俺は食ったからな~」
「へい~すまん~」
親子ともどもネタに走る会話をしつつ、俺は遅めな昼飯を食った。これを食ったら、今度こそ俺はキャラを作ることになるだろう。いや、作らなければいけない!
そういう思いも抱きつつ、俺はキッチンに向かった。