スイカ
三題噺もどき―はちじゅうろく。
お題:ティッシュ・塩・クラゲ
ジリジリと肌を刺す太陽の光。
小さな街の、小さな家。
その軒先で、僕は、母が4等分に切ってくれた、スイカにかぶりついていた。
甘く、水分の多いスイカは、この時期にピッタリの食べ物である。
赤くみずみずしい、このスイカは、実は親戚の誰それが作っているものだとか。
そんなことは、食べてしまえば関係ないのだが。
「おぉ、おも、」
かなり大きなスイカだったので、それの4等分の一つと言えど、手にずしりと重さが伝わる。
―絶対おいしいやつ。
手元の小瓶に入っている塩を、軽くかけて、頂く。
「ん〜うまっ!」
しゃく―と、いい音と共に、スイカの甘さが口いっぱいに広がる。
これ塩なくても十分おいしい、というか塩いらない。
とかなんとか、つい、夢中になって食べてしまい、汁が飛びまくりだ。
手がべたべたしている。
「ティッシュ、ティッシュ、」
一応手元に置いてあった、ティッシュで口元を拭く。
この手の汁気のおおい果物は、おいしいが食べ方を間違うと大惨事になる。
ならば気をつけろという所だが、そんなもの気にしないで食べるからうまいのだ。
(後、もう1個……)
1人1個、と言われはしたものの、やはり、1度食べると止まらない。
そのうえ、うちでスイカを好んで食べるのは、そんなにいなかった気がするので、食べても問題なかろう。
シャク―
子気味のいい音が鳴る。
シャクシャクと、食べ進めていけば、時々種にあったりして。
昔は、種を飲み込んでしまうと腹のなかで育ってしまうから食べるなとよく脅された。
それでなくとも、食べたいものでもないが。
「ふぃ、」
そうやって、2個目を食べ終わり、空を見上げる。
何とはなしに見上げた空。
その空に浮かぶ、白い雲。
(クラゲみたい……)
頭が丸くてフワフワしてて、足があって。
その雲は、本物のクラゲのようにゆっくりと、ふわふわと、風に乗って流れていった。
クラゲは自力で泳げないというけれど、あれは本当なのだろうか。
実は、自力で泳いでいたりして。
「……」
(あースイカ美味かった……)
もう一つ、と思い、スイカに目を向ける。
「ワン!!」
―家で飼っている犬が、全部食べていた。
「マジかよ……」
パタパタと尻尾を振りながら、もっともっとと、ねだっているように見えた。
「もう、それでラストだよ……」
僕も、食べかったわ。
少し、恨めしく思ったけど、ここに置いている僕も悪いのか。
なんて言うふうに、言い訳をつけて、納得しておく。
(はぁ〜スイカ食べたいなぁ)