山を進むお父さん
お父さんと僕は以前から「行こう」と約束していた山へ登りに来ていた。
「小さいと言っても、危険がいっぱいだからな。しっかり捕まっとくんだぞ?」
「うん!」
そして
お父さんは山を登った。
お父さんは山を進む。息が切れても進み続ける。
お父さんは山を進む。怪我をしても進み続ける。
お父さんは山を進む。僕を背負って進む。
お父さんは山を進む。てっぺんを目指して進む。僕に見せたい景色があるんだって。
お父さんは山を進む。獣が出ても迷わず進む。僕を守ってくれる大きな手。カッコいいな。
お父さんは山を進む。てっぺんが見えてきた。お父さんもうすぐだね。
お父さんは山を進む。そして頂上へたどり着いた。
「お父さんはこの景色が見せたかったんだ」
お父さんが僕に話しかけてくる
「お父さん、綺麗だね!!!」
「...」
「お父さん、ずっと大好きだよ。もちろんお母さんも。お母さんによろしくね」
「...」
「この景色を見せてくれてありがとう」
俺は泣いた。
写真が笑ったような気がしたから。