少年、生きてるかい?
まったり描きたい山も落ちも大してないほのぼの師弟話、のはず。
ふわっとお読みください。
「少年、生きているかい?」
その女性は、行き倒れていた僕の前に仁王立ちをして、そう問いかけた。
降り注ぐギラギラとした太陽の光を背に、心配そうな声色など微塵も含ませずただ不思議そうに言ったのだ。フードを被っているであろうそのシルエットは、なんだかひどく大きく見えた。
チカチカとした視界の中意識がどんどんと遠のくのを感じる。
どうして、こうなったんだっけ。
あぁ、そうだ。たどり着いた街から隣街への最短距離をと思って、家からこっそりと持ち出した地図の通りに歩いていたら、予想以上の暑さと地質の悪さに足をとられ、体力も食料も尽き、倒れたところだ。
馬鹿だなぁ、少し考えれば、分かり切ったことだったのになぁ。気付いた時に引き返していたら良かったのになぁ、と後悔したのは一度目に意識を手放す前。
あぁ、のどがカラカラだ。お腹もすいたなぁ。死ぬのかなぁ。
死にたくないから家を出たのに、これじゃ意味がないや。
喉から出た言葉は、思っていたよりもか細くて、言葉というよりもただの音だった。
「の、ど、かわい、た」
僕の声を聴いたその女性は、軽く笑って言った。
「なぁんだ、生きてるじゃないか。そんな装備で歩くもんじゃないよ、ここは」