永遠のゲーム
キャンプに少女を背負って戻ると、私はネルエルに殺気を向けられた。
「クロネ、それは置いていけ。六道の天道を持ってる奴は白黒の中間体だ。それはどちらでも無いからどちらの力も使える」
「知ってる。でも、私の妹にしてフレンド登録もした。しかもパーティーにも入れたから私は離さない」
「死にたいのか?巻き込まれても知らないぞ」
「私は戦闘狂だ。強い奴に負けるなら本望だ」
この短い会話で天使と悪魔は互いの考えを理解した。
そして、天使が諦めてため息をついた。
「はぁ...天道のネウロを認めるよ」
「ありがとう」
こうしてクリアを可能にする確率が上がった。
修羅の悪魔、天使の裏切り者、天道の半端者、このゲームの危険級のメンバーを手にした私は笑った。
この日は攻略をやめて休んだ。
翌日、ゲームにログインすると謎の宛先から全プレイヤーに向けて、ログアウトを封じたと通知が送られた。
「なにこれ!」
「まさか、また事件なの?」
この時ログインしている私とネウロはこの謎の通知に驚いた。
ネルエルは内部のキャラなので何も感じなかった。
「えっ?今から配信する?」
通知が気になって開いて読んでみると、この犯人がゲームの機能を使って話をするらしい。
その開始時間はちょうど今だった。
始まると全フロアの各所に3D映像が流れた。
「初めまして、このゲーム開発者の花巻葵だ」
それで現れた人物に全プレイヤーが驚かされた。
珍しい女開発者でこのゲームのシステムを1人で完成させて、調整も成長も彼女1人が行っている。
そんな奴がこの時にログインしてる全員をログアウト不可にしたと言うのだ。
「君達には実験台になってもらう。マッドサイエンティストと呼ばれるのは慣れてるからなんとでも言え。そう言ってる暇があったらクリアしろ。クリアすれば全プレイヤーが解放される」
これで全プレイヤーの目的が決まった。
それはゲームのクリアだ。そのための攻略が目標になった。
「ちなみに、私はそこまで非情じゃないからここで死んでもリスポーンさせる。ただ、ログアウトはさせない。私はデータが欲しいんだ。意識の世界と物質の世界でどちらを人々が選ぶか。私にデータをおくれ。いいデータを期待をしてるよ」
一気に一方的なことを言うと彼女は消えた。
その時からログインしてた全員が進む方向に悩んだ。
そして、先に進む人間と諦める人間とここで暮らす人間などにすぐ分かれ始めた。
私達は当然先を急ぐ。
「変なことに巻き込まれたけど、私達はクリアを目指すよ」
「クロネの言うことなら僕はついていく」
「私もクリアを優先したい。それがクロネのしたいことなら」
こうして簡単には終わらないゲームが始まった。
しかし、私達には攻略しか無いからダンジョンしか目に入らなかった。
私達はすぐに第二層のダンジョンに侵入した。
リアルを気にしなくていいのは楽だった。
ずっと3人でダンジョンに居てもいいのだから。
「この辺は私が片す」
牙のようなきれいな歯を見せながらニッと笑うと私は一気にダンジョンの雑魚を倒した。
雑魚は2人の手を借りずとも簡単に倒せるから殴るのにちょうどいい。
そんな奴らを一掃しながら他のプレイヤーを追い抜いて私達はすぐにボス部屋に入った。
「ここはゴーレムが相手だ。そんなに難易度は高くないぞ」
ネルエルがそう言うと周辺のレンガが集まってそれが姿を見せた。
私は正直言ってやる気が出なかった。
「お姉ちゃん、行っていい?」
私はネウロにそう聞かれてちょうどいいと思った。
「行きなさい。実力もそれで見てやるよ」
「ありがとう。ストレスはこれで発散するから」
これで今回の対戦の相手が決まった。
天道のネウロ対天使のゴーレムの戦い開始だ。
「半端は使える範囲が広がる。圧倒的差に絶望しなさい」
「ゴゴゴゴ」
互いにやる気満々という顔をしている。
そこでネウロが先に仕掛けた。
「右の光と左の闇の拳で沈め!」
小さな半端者はそう言うとその拳で何度も殴った。
ゴーレムは初期のボスで天使と違うので動きが悪い。
そんな奴では連続攻撃に耐えられなかった。
「砕けろ!」
ものすごい勢いで殴ることを続けたネウロは30秒で奴を破壊して寝かせた。
ゴーレムが倒れたときの揺れと同時に次の階段が現れていた。
これで終わったと思った私は先に進もうとしてネルエルに止められた。
「待て。まだ終わってない」
そう言われて見てみると、ネウロが倒れたゴーレムの上に乗っていた。
そして、ネウロはゴールムの胸を貫いて何かを取り出した。
それが出るとゴーレムは砕けて無くなった。
「これでいいんでしょ?」
ネウロは着地するとそう言いながら取り出したものを解放した。
それはゴーレムの中に閉じ込められていた妖精だった。
「ありがとう。あなたのお陰でようやく休めます」
「お疲れ様。ゆっくり休んで」
会話が終わると妖精は姿を消した。
その後第二層も完全に解放された。
その完全クリアのボーナスはネウロに送られたたくさんの魔石だった。
「これでいい防具作れるよ!」
無邪気に笑ってネウロは私達にそう言った。
それを見て私達はクスリと笑った。
それからネウロに近づいて頭をなでて先に進んだ。